2022年6月17日金曜日

『モロッコ、彼女たちの朝』

モロッコ映画、

『モロッコ、彼女たちの朝』(2019)

を見てみました。
原題は Adam。人の名前です。
静かな、いい映画でした。


舞台はカサブランカ。
(と言っても、ボギーやバーグマンのそれとはまったく違います。
当たり前ですが。)
小さなパンやを営むアブラ。
彼女には小さな娘と二人で暮らしています。
(漁師だった夫は、
「30分したら戻る」
と言って出ていったきり、
海の犠牲となってしまったのでした。)
そこに、身重の若い女性が、
大きな荷物を背負い、
「何か仕事を」
と言ってきたのです。
最初は断ったアブラでしたが、
子を持つ女性として、
その若い女性を放っておくことができません。
(吉野弘の「夕焼け」を思い出します。
やさしい人こそ、苦労を背負い込むのです。)
そして、数日という約束で居候することになったその女性は、サミア。
ただ、この映画のおもしろさはここからです。
あまり詳しく言うのも憚られますが、
このアブラサミアは、
それぞれに、
自分に禁じているものがあることが分かってきます。
明敏なサミアは、
そんなアブラに気づき、
彼女の心にかかっていた鍵を壊そうとします。
アブラが自らに禁じていたのは、
まさに、生きる喜びそのものでした。
そしてサミアは、何を禁じていたのかというと……

アブラを演じるのは、ルブナ・アザバル。
彼女は有名女優ですから、
出演作はとても多いですが、
たとえば;




でも今回の作品は、彼女の代表作になる気がします。

また、マリアム・トゥザニ監督ですが、
彼女は、この映画のシナリオを担当していました;


これもいい映画でした。