西部劇の名作として誉れ高い
『シェーン』(1953)
を見てみました。
(『ゴジラ』の前の年、ですね。)
ある開拓農民一家。
両親と幼い息子の3人家族。
彼らは、木材で家を建て、
自ら畑を作り、
牛や馬を飼い、
がんばって生活しています。
が、
その一帯を我が物にしようとする一味に、
理不尽な立ち退きを(暴力的に)迫られています。
そんなとき、
通りすがりの男(シェーン)と知り合った一家は彼を歓待し、
4人は次第に仲良くなっていきます。
けれどもシェーンには、「過去」がありそうです。
そしてシェーンは、一家を助けるため、
ワルモノと戦うことになります……
院生たちとの感想会では、
これは、フィルム・ノワールの形式であることが話題になりました。
(取り返しのつかない)過去のある男がやってきて、
あるものたちを助けるため、
殺人もいとわず、
ただその一連のもめ事が終わると、
彼はまたそっと去って行く……という物語形式です。
なので、
この映画を現代にリメイクするのは容易だろうと思えます。
実際、院生によれば、X-MENシリーズのスピンオフ、
『ローガン』
は、『シェーン』を意識していて、
実際劇中で『シェーン』の音楽が流れるそうです。
(わたしも見ましたが、気づきませんでした!)
それにしても、
ここでも「臆病者」は一番ダメな存在で、
「男」はつらくても戦わねばならず、
そこには「銃」がもれなくついてくるのでした。
(シェーンが幼い子どもに銃の扱いを教えていると、
母親が現れ、それをやめさせます。
女性はすでに、ちがう原理を生きています。が、
それはほとんど、
男たちのマッチョで自己陶酔的な美学の引き立て役、
にしかなっていません。)
というわけで、
フィルム・ノワールの原初的な形を持ち、
現代アメリカを覆う価値観があらわに出ている西部劇でした。
ただ、映画としてやや弱いと感じるのは、
主人公シェーン(正しくはシェインですけど)の人間性が単純で、
屈折や葛藤がほとんど見えなかったことです。
バックストーリーは一切語られないし、
彼の個人的な事情はほぼわからないのです。
それがあれば、ちょっと違う映画になったと思います。