2022年7月6日水曜日

『シェーン』

今日の大学院ゼミでは、
西部劇の名作として誉れ高い

『シェーン』(1953)

を見てみました。
(『ゴジラ』の前の年、ですね。)


ある開拓農民一家。
両親と幼い息子の3人家族。
彼らは、木材で家を建て、
自ら畑を作り、
牛や馬を飼い、
がんばって生活しています。
が、
その一帯を我が物にしようとする一味に、
理不尽な立ち退きを(暴力的に)迫られています。
そんなとき、
通りすがりの男(シェーン)と知り合った一家は彼を歓待し、
4人は次第に仲良くなっていきます。
けれどもシェーンには、「過去」がありそうです。
そしてシェーンは、一家を助けるため、
ワルモノと戦うことになります……

院生たちとの感想会では、
これは、フィルム・ノワールの形式であることが話題になりました。
(取り返しのつかない)過去のある男がやってきて、
あるものたちを助けるため、
殺人もいとわず、
ただその一連のもめ事が終わると、
彼はまたそっと去って行く……という物語形式です。
なので、
この映画を現代にリメイクするのは容易だろうと思えます。
実際、院生によれば、X-MENシリーズのスピンオフ、
『ローガン』


は、『シェーン』を意識していて、
実際劇中で『シェーン』の音楽が流れるそうです。
(わたしも見ましたが、気づきませんでした!)

それにしても、
ここでも「臆病者」は一番ダメな存在で、
「男」はつらくても戦わねばならず、
そこには「銃」がもれなくついてくるのでした。
(シェーンが幼い子どもに銃の扱いを教えていると、
母親が現れ、それをやめさせます。
女性はすでに、ちがう原理を生きています。が、
それはほとんど、
男たちのマッチョで自己陶酔的な美学の引き立て役、
にしかなっていません。)

というわけで、
フィルム・ノワールの原初的な形を持ち、
現代アメリカを覆う価値観があらわに出ている西部劇でした。
ただ、映画としてやや弱いと感じるのは、
主人公シェーン(正しくはシェインですけど)の人間性が単純で、
屈折や葛藤がほとんど見えなかったことです。
バックストーリーは一切語られないし、
彼の個人的な事情はほぼわからないのです。
それがあれば、ちょっと違う映画になったと思います。