このところ、わたしの周りでは新刊ラッシュの感があります。今日もその内のひとつ、堀江敏幸さんの、『正弦曲線』のご紹介です。
世の中には文章うまい人が結構いるもので、たとえばわたしの属している総合文化教室の、共同研究の仲間たち、つまり、『本は読めないものだから心配するな』の発売を控えている管啓次郎さんをはじめ、「カミソリ」の異名をとる写真論の倉石さん、日本語ばかりか中国語でも本を出している林さん(彼女の文章には、不覚にも! 泣かされたことがあります。)、そして若きホープ波戸岡さん、仲間ぼめではなく、彼らはみんな文章が上手だと思います。すごいな~、と思って、いつも読んでいるわけです。
そして堀江さんも、いまさら指摘するまでもなく、達意の文章の人です。緩急、というか、は~~~、という感じ。(分かりづらいか?)
今回の『正弦曲線』は、堀江さん初の数学の論文! ではなく、さまざまな話題満載のエッセイ集です。どれも質が高いのですが、しいて言えば、やっぱりわたしは、黒田三郎や清水哲男の詩が引用されるものが印象に残りました。(わたしも好きな詩人、北村太郎も登場します。)
後退する。
センター・フライを追って、
少年チャーリー・ブラウンが。
ステンゲル時代の選手と同じかたちで。
これは見なれた光景である。 「チャーリー・ブラウン」
この一節を含む清水さんの詩を、堀江さんはこれまでに何度も読んできた書いています。わたしもまた、何度も読んできました。そして今回堀江さんの文章を読んで、やっと少し、味わいが分かったような気がしています。
これ以外にも、知らないことがたくさん書いてあり、勉強にもなりました。特に、焚き火の作る上昇気流が、あんなことできるなんて……! 装幀も端正な、いい本でした。