大学院の「映画と都市」はオンデマンドにしましたが、
ゼミは、相談の結果、いつも通り対面で決行。
それどころか、
ランチを挟んで2本の映画を見ることにしました。
今ゼミでは、1930年代の、
ジャン・ルノワール監督の7作品を全部見る!
という企画の途中で、
今日はまず『どん底』を見ました。
ギャバンとルイ・ジューヴェの共演で、
わたしも、何十年ぶりかで見ましたが、
十分おもしろかったです。
博士課程のN君も、
「とってもおもしろい!」
と言ってました。
没落してゆく貴族(階級)と、
「どん底」から抜け出してゆく「コソ泥」、
彼らが出会い、意気投合し、信頼し合い、
そしてそれぞれの方向に向かって分かれてゆく、
しかも「コソ泥」には、愛らしい恋人もいる、
というわけなんですが、
これは当時のフランスの、
人民戦線内閣誕生へ、という文脈抜きには、
その意味の深層を考えることはできません。
この時代のルノワールの映画は、
当時の政治状況の写し絵であり、
しかもそこには、過去も、未来も流れ込んでいるわけです。
で午後は、ちょっと息抜きに、
そしてギャバンはよく知らないという修士のT君のために、
今度はジュリアン・デュヴィヴィエ&ギャバンの、
『望郷』を見てみました。
この映画は、もちろん超有名作で、
わたしの世代の仏文の学生なら、
まず見ていると思います。が、
若い院生たちは、見ていないのです。
まあこれは「古典」なので、
とりあえず見ておくことにしました。
当時のアルジェリアとフランスの関係は、
当時のたとえば大連と日本の関係に似ているわけです。
それに気づいていたからこそ、
外地にいるものの心情に寄せて、
『望郷』という邦題も生まれたのでしょう。
(原題は、主人公の名前、Pépé Le Moko。)
完全に映画に、
つまり30年代のアルジェに入り込んでいたわたしは、
映画が終わった時、
自分が21世紀のゼミ室にいるのでびっくりしました。
そんな1日でしたが、
悪くはないですね。