2021年4月26日月曜日

ジャン・ギャバン

緊急事態宣言が出て最初の授業日。
大学院の「映画と都市」はオンデマンドにしましたが、
ゼミは、相談の結果、いつも通り対面で決行。
それどころか、
ランチを挟んで2本の映画を見ることにしました。

今ゼミでは、1930年代の、
ジャン・ルノワール監督の7作品を全部見る!
という企画の途中で、
今日はまず『どん底』を見ました。
ギャバンとルイ・ジューヴェの共演で、
わたしも、何十年ぶりかで見ましたが、
十分おもしろかったです。
博士課程のN君も、
「とってもおもしろい!」
と言ってました。
没落してゆく貴族(階級)と、
「どん底」から抜け出してゆく「コソ泥」、
彼らが出会い、意気投合し、信頼し合い、
そしてそれぞれの方向に向かって分かれてゆく、
しかも「コソ泥」には、愛らしい恋人もいる、
というわけなんですが、
これは当時のフランスの、
人民戦線内閣誕生へ、という文脈抜きには、
その意味の深層を考えることはできません。
この時代のルノワールの映画は、
当時の政治状況の写し絵であり、
しかもそこには、過去も、未来も流れ込んでいるわけです。

で午後は、ちょっと息抜きに、
そしてギャバンはよく知らないという修士のT君のために、
今度はジュリアン・デュヴィヴィエ&ギャバンの、
『望郷』を見てみました。
この映画は、もちろん超有名作で、
わたしの世代の仏文の学生なら、
まず見ていると思います。が、
若い院生たちは、見ていないのです。
まあこれは「古典」なので、
とりあえず見ておくことにしました。
当時のアルジェリアとフランスの関係は、
当時のたとえば大連と日本の関係に似ているわけです。
それに気づいていたからこそ、
外地にいるものの心情に寄せて、
『望郷』という邦題も生まれたのでしょう。
(原題は、主人公の名前、Pépé Le Moko。)
完全に映画に、
つまり30年代のアルジェに入り込んでいたわたしは、
映画が終わった時、
自分が21世紀のゼミ室にいるのでびっくりしました。

そんな1日でしたが、
悪くはないですね。