『ドクター異邦人』
見終わりました。
きわめて優秀な「ドクター」たちの物語なので、
「ブラックジャック」的な雰囲気もあります。
主人公は4人、2カップルだと考えられるでしょう。
最初のカップルはフンとジェヒ。
有能な医師だったフンの父親が、
企みの中で北朝鮮へと追いやられたとき、
フンもまた北へ渡り、
その後の10年ほどをかの地で暮らすことになります。
で、そこで出会ったのがジェヒです。
医学の道を目指す二人は、深く繋がってゆきます。
第二のカップルは、ともに医師であるジェジュンとスヒョン。
スヒョンは大病院の娘で、
アメリカ帰りの「天才」医師ジェジュンは、
(なかなか明かされない過去を秘めたまま)
その大病院のトップを狙っています。
物語は、離れ離れになった第一のカップルが、
第二のカップルが働く病院で再会することで、動き出します……
長いドラマですが、
序盤はまあまあ、
前半から中盤、後半へ向かうあたりは◎、
で、ラストスパートでやや息切れ、
という感じでしょうか。
見ていてすぐ気づくのは、
2つのカップルを形成する4人はみな、
「父親」との関係で、その生を規定されていることです。
これは、韓国ドラマの(儒教的)王道と言えるでしょう。
あるものはその遺言を生きることを願い、
あるものは父親の復讐を果たすことを自分の人生としてしまいます。
(準主役で登場する中年医師もまた、
父親の遺言を生きていますが、
彼の場合、託された遺言そのものが世俗的なものでした。)
では母親は?
これは、父親に比べると圧倒的に影が薄い。
すぐに亡くなったり、ほとんど語られなかったり、
自分の意思を持てなかったり。
となると、2カップルの2人の女性たちがどうだったか、
考え直す必要がでてきますが、
ジェヒについては、愛があり、でも策謀もあるという設定。
ただしこの「策謀」は、あくまでフンのためであり、
自分のためではありません。
そしてスヒョン。
彼女は、自分の気持ちに素直で、
好感の持てる人物として描かれていますが、
それは裏を返せば、お嬢さん的な自由さという面もあり、
またラスト近くのさまざまな言動は、
まあ言ってしまえば脚本家の力量不足というか、
1つのキャラとしての整合性が保たれていない印象もあります。
総じて言えば、
女性たちの描き方は、
男性のそれに劣るということにならざるを得ないでしょう。
ちょっと厳しく書いてしまいましたが、
もちろん、いい場面、いい演出も、何度かありました。
破綻しているようなスヒョンも、
中盤過ぎまでは魅力的でした。
S とは言えませんが、
十分合格ラインには達していると思いました。