2013年10月3日木曜日

La Folle Histoire d'amour de Simon Eskenazy (再)

先日見て、ここにも書いた

La Folle Histoire d'amour de Simon Eskenazy

http://tomo-524.blogspot.jp/2013/09/la-folle-histoire-damour-de-simon.html

もう1度見てみました。

この映画は、ユダヤ人の世界が「枠」となっています。
(それを包むものとしてシャトー・ルージュがあり、パリがあります。)
主人公シモンも、元妻も、元妻の再婚相手も、
彼らみんなの親たちも、ユダヤ人です。
シモンのところに転がり込む母親は、
「アウシュヴィッツ・クラブ」に入っていて、
シモンの(アンジェラが現れる以前の)恋人ラファエルが、
悲劇について研究している哲学の先生だと判明すると、
「悲劇のことならすべて知ってるわよ」と言いもします。

で、そこに一人だけ異質な人がいます、アンジェラです。
ただしアンジェラというのは、女装しているときの名前で、
男の風貌の時は、ナイムです。
もちろん、それが同一人物であることは見てわかるのですが、
映画内の人物たちは、アンジェラが女装した男だとは気づきません。

主人公は、やや優柔不断で、ややわがままで、やや器量が小さい感じ。
ただだからこそ、終わり近く、
アンジェラに告白する場面は、
よくがんばったね、という印象が生まれます。

Simon      J'aime Angela et Naïm aussi, je l'aime.
Angela     Tu l'aimes ?
Simon      Je t'aime.

1人の中に2人いるから、こんな会話になるんですね。

それからシモンの息子のヤンケレ。
このアメリカナイズされた、でもフランス語も話せる子供は、
明らかに親とは違う世代に属していて、
今後世代間問題が発生するのは確実、という印象を与えます。
また、シモンとラファエルが見ていたテレビでは、
ジャンケレヴィッチの声が聞こえてきます。
この辺も、ユダヤ世界を強く印象付けます。

しかしなぜ、舞台をあえてシャトー・ルージュにしたのでしょうか。
それははっきりわかりませんが、
そこに暮らす人とユダヤ人との間に、
マイノリティー、という共通点があるのは、
間違いないでしょう。
もしも舞台が16区だったら、ずいぶん違う映画になっていたでしょう。
アラブであるアンジェラが現れるためには、
16区は不自然だし。

やっぱり、なかなかおもしろい映画でした。