2013年10月25日金曜日

Mauvaise Foi


また台風です。
被害が少ないことを祈っています。

さて、今日見たのは、
実はずっと楽しみにしていて、
DVDの到着を心待ちにしていたこの映画、

Mauvaise Foi

です。
この表現、仏和大辞典には、
「不誠実、悪意、虚偽;(サルトルの用語として)自己欺瞞」
が当てられています。
直訳は、「悪い信仰」となるでしょうか。

アラブ人(モロッコ系)の男性、ユダヤ人(アシュケナジム)の女性、
2人はもう4年も一緒に暮らしているのですが、
ついに、授かってしまったのです。

http://www.youtube.com/watch?v=mHZzlMiD0ds

別々の宗教を信じる2人、というほどではないけれど、
たしかに、
別々の文化圏で生きてきた2人が、
この妊娠をきっかけとして、
社会的な関係へ踏み出そうとするのですが、
いざそうしてみると、
今までは気づかなかったさまざまなチガイが目についてくるのです。
女性の家族は反対するし、
彼は家族に話すことさえできないし。

でも、チガイはチガイ。
彼らには共有されているものもあるのです。
それに気づくのに、ちょっと時間はかかったけれど……というお話。

監督は主役のゼム自身で、
コメディーではありますが、やっぱりおもしろい。
ゼムの幼馴染で、
かつて同じHLM(だと思うのですが)に住んでいた親友、彼もユダヤ人。
なかなか重要な役です。

女性(セシル・ド・フランス)に、
実は紹介したい人がいるの、
と打ち明けられた母親は大喜びし、
で、娘に尋ねるのです。
「その人、わたしたちのグループ?」(Il est de chez nous ?)
「Chez nous ってどういうこと?」
「わかるでしょ」
「そう、フランス人よ」
「ああそうね、で……」
「いいえ、彼は違うの。それが問題?」
「全然! わたしたち、セファラッドも大好きよ。ねえ、パパ」
「そうさ、彼らはユダヤ人の1番の友達だよ」

これ、なんだかすごいですね。
もちろんセファラッドもユダヤ人なんですが、
アシュケナジムは、必ずしもそう思っていないのでしょうか。

それから、この chez nous という表現も、
何度か耳にしました。
たとえば『アイシャ』でも、アイシャがボビニーの「共同体」について語るとき、
chez nous では、ブラブラブラ と言っていました。

そして映画の舞台は、
メニルモンタンやベルヴィルあたり。
やはり移民街なんですね。
で、
ゼムの妹役に、レイラ・ベクティ。
彼女は「男勝り」でサッカーに夢中。
同年代の(単細胞な)男の子たちに「キッチンに行け!」なんて野次られて、
キレてみたり。
なかなかいいです。
(彼女の母親は、この男のたちの側ですが。)

ただ、彼女とゼムは、ここでは親子でした。

http://tomo-524.blogspot.jp/2013/02/blog-post_18.html

どちらかというと、
まあ親子のほうがしっくりくる、かな。