先日見た『海辺の詩人』は、
イタリアを舞台に、
福州出身の女性と、
ユーゴ出身の男性の交流を描いていました。
これは、
ヨーロッパにおけるアジア、
という視点からも捉えられる作品でしょう。
パリにおけるアジア、
ということなら、
『パリ移民映画』でとりあげた『恋々風塵』もそうだし、
『エキゾチック・パリ案内』でとりあげた、
『パリ・ジュテーム』の中の「ショワジー門」もそうです。
『パリ、ただよう花』も忘れるわけにはいきません。
そして、登場人物たちの中にアジア人がいた、
という程度で言うなら、
これはもう数えきれないほどです。
(Steve Tran はとてもたくさんの映画に出演しています。)
ただこれらの作品は、あくまで
ヨーロッパにおけるアジア、
であり、
アジアから見たヨーロッパ、
ではないわけです。
こういう視点に立つなら、
ジャ・ジャンクーの『世界』などが気になるところです。
今回見たのは、
Les mauvais joueurs (2005)
です。
この映画は、
サンティエのユダヤ人社会を舞台にしているんですが、
主人公の恋人を演じたのは、
リン=ダン・ファン。
彼女は、『インドシナ』、『真夜中のピアニスト』、
そしてTout ce qui brille にも出てました。
ユダヤ人の恋人にアジア系を持ってきたのは、
わたしの知る限り、
この映画だけです。
(アラブ系の男性とユダヤ人女性、
という組み合わせは、
Rengaine にありました。)
サンティエに暮らすチンピラ3兄弟。
長兄(シモン・アブカリアン)と末弟は、
アジア人女性たち
(人身売買的に移民してた女性たちです。
『海辺の詩人』のリーの場合と似ています。)
を使って洋服屋や中華レストランを経営する組織に加担し、
主人公である次兄(パスカル・エルベ)は、
もう首が回らない父親の生地屋を手伝い、
そして時には3人集まって、
路上でイカサマ博打を開いたりもします。
物語は、
リン=ダン・ファンの弟が不法にパリに到着したことで、
動き始めます。
この無鉄砲な少年を庇ううち、
次兄は、組織と対立する羽目になるのです。
ただ……
この作品は、
映画としてのデキはよくありません。
B級、と言っていいのでしょう。
音楽のセンスもイマイチだし、
場面ごとの時間の配分が間違っている感じです。
パリのユダヤ人社会とアジア系シンジケートの関係、
これが扱われている点は(わたしから見れば)◎なだけに、
残念です!