2021年2月3日水曜日

『クエシパン ~ 私たちの時代』

FFF からの1本、

『クエシパン ~私たちの時代』

を見てみました。
Kuessipan とは、インヌ民族の言葉で、
à toi とか、 à ton tour とかを意味しているそうです。 


舞台は、カナダ・ケベック州、
セント・ローレンス川沿いの先住民居住区である、
ウアシャとマリオットナム、
そして前者の隣町であるセッティル(Sept îles)。
ここと比べると、モントリオールはもちろん、
ケベックシティーでさえ都会に見えます。

ウアシャに生まれ育ったミクアンとシャニスは、
子どものころからの友だち、
というか、友だち以上、ソウル・シスターという感じ。
ただ、二人が17歳になり、
ミクアンに白人の恋人ができた時、
二人の関係がぎくしゃくし始めます。
しかもミクアンは、
学業を続けるためにケベックシティーに行く決心をし、
一方シャニスは、
暴力的な夫との間にすでに赤ちゃんが生まれているのです……

人生の途中で、
二人の女性の選んだ道はまったく別の方向を向いてしまいました。
こういうことって、あるでしょう……。
ミクアンは、
フェンスに囲まれた居住区から抜け出し、
自由になり、将来を開けたものにしたいと願っています。
これは、地方から都会を目指す心理と、
基本的には同じといえるでしょう。
また、学業を途中で投げ出し、
アラクレの男と暮らし始め、
居住区から出てゆく気などまったくなく、
インヌの女たちが生きてきたように生きることを選ぶシャニスは、
たとえばイギリスのワーキング・クラスが、
あえて肉体労働を選ぶ態度と通底するものがあると感じます。
ただもちろん、この映画の場合は、
そこにインヌ民族の「プライド」という問題が、
大きく関わってくるわけですが。

またこの映画は、
女性の友情を描いた作品でもあります。
これもまた当たり前ですが、
この視点から見た時、
映画はもっとも美しいのでしょう。

先住民居住区の生活と意見は、
なかなか知る機会がありません。
その意味では、とても貴重なフィルムだと言えると思います。