2021年2月11日木曜日

Marseille 再考

先日シーズンⅠ&Ⅱを見終わったMarseille。
まあまあおもしろい、というところだったわけですが、
あとからちょっと考えてみたのは、
女性たちの描かれ方についてです。

このドラマの主役は、
ドパルドュー(ロベール)とブノワ・マジメル(リュカ)演じる父子です。
で、女性たちはといえば、
まずロベール側では、
チェリストである妻ラシェル、
そして地方新聞 La Provence で働く娘ジュリア、
そしてリュカ側では、
権謀術数に長けた県知事ヴァネッサ、
左翼の両親を持ち、けれども自身は右翼ファシストで、
リュカの子を宿しもするジャンヌ、
さらには、
ジュリアの友人バルバラ、
バルバラの同性の恋人、ルビもいます。

(以下ネタバレします。)

さて、
最後に挙げたルビはアフリカ系で、
ジーパンとスタジャン姿で、
不法移民たちを助けたり、
オランピック・マルセイユの応援団長をつとめたり、
実際にOMの経営にも加わったりもする、
高感度の高い女性です。
その彼女は、ファシストのテロに合い、
あっさり殺されてしまいます。
県知事のヴァネッサは、
男たちを政治的に翻弄した末、
最後は自分がみんなに裏切られます。
ジャンヌは、リュカが市長に就いた時、
副市長に指名され、
リュカが辞任した後は自身が市長のポストを得ますが、
リュカの間にできた子を中絶し、
それがスキャンダルとなって辞任に追い込まれます。
リュカにも、個人的な事柄を政治に利用したと責められ、
結局ジャンヌは孤立し姿を消します。
ジュリアは、何人かと関係を持ち、
権力者の娘として奔放に生きていますが、
最後は殺されかけ、
別のお金持ちの男性の庇護のもとに入ります。
ラシェルは病を得、
難民の子どもを助けたりもしますが、
夫ロベールからは距離を置かれ、家を出ます。
が、ロベールが半歩踏み出すと、
彼女は喜んで元の鞘に収まろうとします……

魅力的な女性たちは、殺され、あるいは苦しみを与えられ、
彼女らが救われるのは、
白馬の騎士が現れた時だけ、ということになります。
ドラマを見ている最中は、
ミソジニー的だとは感じませんでしたが、
こうして振り返ると、
そうした要素がないとは言えない気がしてきます。
ロベールとリュカが、
最終的には和解し、
社会的ポストも再獲得したのと比べると、
やはり……

制作者たちは気づいていないのでしょうが、
ここは明らかにツッコミどころだと思われるのでした。
で、
今ちょっと調べてみたら、
いわゆるプレス評も散々なもので、
厳しい調子でこき下ろしているものがいくつもありました。
日本の提灯批評とは、大違いですね。