2021年2月27日土曜日

ここでボードレール

今、韓国ドラマは『ミセン』を見ています。
最初の数話、
進みが遅すぎて止める寸前でしたが、
そのギリギリのあたりから調子が出てきて、
その後はまあまあ順調に見ています。
性差別、学歴差別、パワハラ、などが大盛りの「サラリーマンもの」、
と言っていいと思いますが、
かつて囲碁に打ち込みモノにならなかった主人公の、
挫折と再起、そして「成長」が物語の縦糸になっています。


で、
さっき見ていた12(だったか13だったか)話の最後、
何の前触れも説明もなく、
(といっても、物語とのリンクはありますが)
主人公の内的独白という形で、
突如ボードレールの散文詩が現れた時は、びっくりしました。

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酔いたまえ

 つねに酔っていなければならない。すべてがそこにある。
これこそが唯一の問題なのだ。おまえの 両肩を砕き、地
へとおまえを前のめさせる〈時間〉の、恐るべき重荷を
感じないためには、休むこと なく酔わなければならない。
だが何によってか。酒に、詩に、あるいは美徳に、おま
えの思うままに。だが酔いたまえ。
 そうしてもしも時折、宮殿の階段の上で、濠の緑の草
の上で、おまえの部屋の陰鬱な孤独の中で、 酔いがすで
に減じあるいは醒め切り、目覚めるのならば、たずねた
まえ、風に、波に、星に、小鳥に、 大時計に、逃げる
すべてのものに、嘆くすべてのものに、回るすべての
ものに、歌うすべてのものに、 話すすべてのものに、
今、いずれの時かとたずねたまえ。そうすれば風は、
波は、星は、小鳥は、大 時計は、おまえにこう答え
るだろう。「いまや酔う時である! 〈時間〉に酷使
される奴隷にならない ためには、酔いたまえ。絶え
ることなく酔いたまえ! 酒に、詩に、あるいは美徳
に、おまえの思う ままに。」 
(阿部良雄訳)

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ドラマの中では、
純粋に情熱を傾けるのだ、
くらいの意味で使われていましたが、
おそらくこの詩は、
それほど朗らかなものでないでしょう。

韓国では、
詩集がよく売れるのだという話を聞いたことがありますが、
こういう形でボードレールが使われるほどなんでしょうか?
そうだとしたら、
すごいですねえ……