2011年10月14日金曜日

シャンソン・コロニアル


今日の授業では、ず~っとかすれ声でしたが、
ピン・マイクのおかげで、まあなんとか授業できました。
学生には聞きづらかったと思いますが。(デゾレ!)

さて先日、取り次ぎに勤めてらっしゃるアキちゃんから、
ある本を紹介してもらった、と書きました。
その本とは、
植民地を謳う ――シャンソンが煽った「魔性の楽園」幻想』
です。
この本の帯にはこうあります;

フランスはかつて一大植民地帝国であった。
(……)現地の人びとを「野蛮人」や「食人種」として侮蔑しながら、
男たちはそこに楽園幻想を抱き
「女・裸・阿片」を謳い上げる「植民地シャンソン」を生み出した。

ポイントは「植民地シャンソン」、シャンソン・コロニアルです。
わたしはこういうジャンルがあることさえ知らなかったので、
蒙を啓かれる思いで読みました。

ただ紹介されている歌の中には、
知っているものもあります。
たとえばあのジョセフィン・ベイカー(ジョゼフィン・バケール)の「2つの恋」。
これは有名な曲だし、そういえば一時、親がよく家でかけてました。
これです。J'ai deux amours, mon pays et Paris...

http://www.youtube.com/watch?v=4owwqtTqtdA&feature=relmfu

この1930年の曲は、
「アフリカで、パリへ去った恋人のコロン(植民者)を想って唄う」ものだというのですが、
そうだったんでしょうか?
もしそうだとすれば、驚きです。
単純に、パリへの憧れ、くらいに思ってましたから。
(それにしても、植民地から見た憧れ、ではあったわけでしょうが。)
それはともかく、
「ジョセフィン・ベイカーの唄には、仏植民地」などが頻繁に登場し、
「植民地の女王」が歌うことで、
それらの植民地がいわば「お墨付き」をもらった、という著者の主張はおもしろいです。
ジョセフィンはルイジアナの出身で、NYでも歌い、
その後パリにやってきてブレイクした歌手・ダンサーです。
もちろん彼女は黒人ですが、それでも、
アフリカの植民地を代表するのにふさわしい歌手という気はしませんね。
その役自体が作られたもので、
「フランス」が必要としていた、と考えるほうが自然でしょう。

この本、正直に言うと、
構成、引用、表記の仕方などに、改善の余地があるかなとも思います。
でも、読み始めたら一気に読めたし、
わたしの知らなかったことがたくさん書いてあったし、
さまざまな「刺激」に満ちた inspiring な本であると思います。

アキちゃん、ありがとうございました!
今後ともよろしくお願いします!