2018年1月21日日曜日

Cherchez la femme

イラン系フランス人である若い女性監督、
Sou Abadi の、
初めてのフィクション映画である

Cherchez la femme (2017) (『その女性を探せ(犯罪の影に女あり)』)

を見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=_WmpSTj-rjE

わたしとしては、
パリに住むイラン系フランス人が主人公、
というだけで興味深く、
なかなか面白かったです。
ただ、「コメディ」として作られているのですが、
そういう funny な面白さは、それほどでもない、かも?

恋愛中のカップル、レイラとアルマンは、
パリの名門シアンス・ポの、修士の2年目。

アルマンは、本名はArmandjun。
彼の両親は、イラン革命(1979)のとき、
フランスに政治亡命したインテリカップルです。
(当時、インテリや共産主義者が、多く殺されました。
2人は亡命したことで難を逃れましたが、
一方では、イランの現状に対して、
罪悪感をも抱いています。
自分たちが行動しなかったから、
イランはこんな風になってしまった……と。)
母親のほうは、筋金入りのフェミニストなんですが、
なぜか、親戚の女性と息子を結婚させることにこだわるという、
はっきりした矛盾を体現しています。
そしてそのせいで(?)、
アルマンは母親にレイラを紹介できないでいます。

さて、レイラとアルマンの2人は、
これから、国連がNYで行う研修に参加する予定で、
張り切っているのですが、
そんなとき、
レイラの兄が10か月ぶりに帰国します。
実はこの兄、妹たちには秘密で、
イエメンの過激派組織で訓練を受けていたのです。
(この辺が、コメディにしてはドキッとさせ過ぎ?)
まったく様子が変わってしまった彼は、
資本主義的な価値を否定し、
やがては妹レイラを、部屋に軟禁します。
スマホは、シムカードを抜かれ、
しかも兄はそれを飲み込んでしまうのです。
で、
物語が本格化するのはここからなんですが、
レイラに会いたい一心のアルマンは、
ヴォランティア活動しているセンターで、
アフガン出身の難民からの提案を採用し、
なんと、チャドルで目以外は隠し、
女性として、レイラの家を訪ねることにしたのです。
そして、この訪問を重ねるために、
アルマンはコーランを猛勉強し、
兄の質問にも、
美しく答えてゆきます。すると……
なんとこの兄が、アルマン扮する女性、シエラザードに、
恋してしまうのです……

この映画の背景にあるのは、
もちろん「過激化」の問題です。
ただ、この映画が目指しているのは、
その解明や告発ではなく、
それを抜け出た新たな地平の提示なのでしょう。

でも人物として一番複雑なのは、
アルマンの母親なのでしょう。
政治亡命者で、インテリで、
フェミニストで、伝統主義者で、
学歴と、フランス社会での成功に価値を置き、
79年当時の熱狂は遠い……。
彼女を主人公にした作品も、
ぜひ見てい見たいと思いました。
(つまり、監督の母の世代を描くということですね。)