2018年1月30日火曜日

『ウィリー ナンバー1』

MFFF 6本目は、

『ウィリー ナンバー1』

です。

これは、

ウィリー、50 歳。
双子の弟ミシェルの死をきっかけに、
初めて実家を出て、近くの村で生活を始める。
コドゥベックに行く。アパートを借りる。
友だちだって作る。こんな生活クソくらえだ!』
適応障害のあるウィリーが、
知らない世界で自分の居場所を見つけようと奮闘する、
オフビートなブラック・コメディ」

https://www.myfrenchfilmfestival.com/ja/movie?movie=42023

https://www.youtube.com/watch?v=8IgOg9alMN8

とありますが、
「ブラックコメディー」というのは……?
まず、そんなにブラックじゃないし、
コメディーかと言われると、ちょっと考えてしまいます。
まあ、主人公のウィリーが、
「オフ・ビート」なのは間違いありませんが。

**********以下、若干のネタバレあり***************

物語りの後半、
Caudebac に暮らし始めたウィリーは、
スーパーのカルフールで清掃係の仕事を得て、
そこで、
同じ職場で働くゲイのウィリーと知り合います。
そう、二人は同じ「ウィリー」なのです。
この二人のウィリーの間の距離の変化は、
なかなかデリケートで、
慎重に描かれています。
そしてやがて、
2人には大きな共通点があることが判明します。
それは、それぞれ、
愛する人を失ったことがあること、
その傷が癒えてはいないこと、です。
しかも2つの死は、両方とも、
その原因がはっきりしない、というか、
残されたものにとって、納得し難いものなのです。

「バカげた居眠り運転」の結果命を落とした恋人を想って、
ゲイのウィリーは言います。

On cherche toujours des explications.
Mais il n'y a pas d'explications.
Faut juste regarder la vérité en face. 
Et la vérité, c'est de la merde.
Il est mort.

あたしたちはいつだって説明を探してる。
でも、説明なんてないの。
真実を、正面から見なきゃならないってだけのこと。
ただその真実ってのが、クソなのよ。
あの人は死んじゃったんだから。

これは、なかなか印象的なセリフです。

またゲイのウィリーは、ある晩、
50歳のウィリーが部屋に来た時、
この歌のあてぶりを踊って見せます。

https://www.youtube.com/watch?v=-F_9fgtEKYg

Donnez moi une suite au Ritz, je n'en veux pas! 
Des bijoux de chez Chanel, je n'en veux pas! 
Donnez moi une limousine, j'en ferais quoi?

Offrez moi du personnel, j'en ferais quoi? 
Un manoir à Neuchâtel, ce n'est pas pour moi. 
Offrez moi la Tour Eiffel, j'en ferais quoi?

Je veux d'l'amour, d'la joie, de la bonne humeur, 
C'n'est pas votre argent qui f'ra mon bonheur, 
Moi j'veux crever la main sur le cœur.

要は、
リッツ・ホテルもシャネルもイムジンも、
エッフェル塔だっていらない、
愛と喜びのなかで機嫌よく暮らしたいだけ、
ということでしょう。
彼がこの歌を歌うのは、とても似合っています。

この映画の監督として、
4人の名前が挙がっているのですが、
彼らはみな(リュック・ベッソンが作った)
映画学校の卒業生だそうです。