2018年11月6日火曜日

『ゴッドタウン』

リチャード・ジェイキンスの出演作はとても多いのに、
『扉をたたく人』
以外はあまり知らないので、
ちょっと見てみたのが、

『ゴッドタウン』(2014)

です。

https://www.youtube.com/watch?v=K-lNef4ZyJs&t=74s

舞台は、1978年、
フィラデルフィア郊外の街、ゴッズ・ポケット。
(この「神のポケット」という地名が、
オリジナルのタイトルです。)
この街は、根っからの労働者の街。
ここで生まれ、喧嘩をし、
盗み、放火をし、結婚してから子供を殴り、
肉体労働と酒とギャンブルに首までつかり、
そして死んでゆく……そんな街。
ただし映画の中には、「よそ者」が二人。
それが、主人公のミッキーと、
ミッキーの美人妻ジーニーに言い寄るコラムニスト、リチャードです。

ある日、ジーニーの息子、レオンが事故死したという知らせが。
レオンは、どうしようもなくダメなワカゾーでしたが、
母親のジーニーはこの「事故死」に疑念を抱きます。
(実際それは、事故ではありませんでした。)
金欠で、友人と盗みを働いているミッキーは、
知り合いのワルに頼んで、
レオンの死の真相を探らせる一方、
レオンの葬儀のためのお金を競馬で全部すってしまいます。
そして地元紙のコラムニストも、
この不可解な死をめぐって動き出しますが、
このダメダメな記者は、
むしろ母親のジーニーに興味を抱き……
というお話。

ジーニーを中心に見ると、
3人の男たちがその周囲にいます。
ダメな息子、
ダメな(再婚した)夫、
ダメな愛人、
です。
この内大人二人は、「よそ者」なのですが、
ジーニーは「この街で生きるしかない」と言います。
そして夫は街から去り、
愛人は、コラムの内容が気に入らないと、
街の男たちから袋叩き似合います。
つまり、二人は「街」に拒絶されるわけです。
となると、このジーニーこそ、
「街」の擬人化であるように感じられてきます。
彼女は、男たちを受け入れるように見えながら、
結局は排除してしまうのです。

もう1点。
実はレオンを殺したのは、
黒人の老人です。
労働者仲間は、
彼をかばって嘘をつくのです。
一方、ワルたちは(おそらく)ユダヤ人で、
彼らはある老婦人によって撃ち殺されます。
つまり、「街」から排除されるのです。

こうして見ると、「街」の構成員が誰なのか、
わかってくるわけですね。