全14話、ついに見終わりました。
1話80分程度のものが多いので、
延べ約20時間弱くらいでしょうか。
エンタメとしておもしろかったので、
長くは感じませんでした。
テレビ・ドラマとはいえ、
政治ドラマ、
心理劇、
犯罪映画、
アクション、
家族映画、
などの要素が、
ジャンル混交風に織り交ぜられています。
そしてその中心にあるのは、
もちろん恋愛物語なんですが、
この恋愛は、
現代的な貴種流離譚の様相を呈しています。
現代の貴種、それは、
資本主義国家においては、
事業を成功させた財閥系のお嬢さまであり、
独裁国家においては、
権力の中枢の近くにいるものの息子、
なのでしょう。
ここで描かれる「恋愛」は、
そうした意味での「貴種」同士の出会いによって生まれます。
そして彼らは、
38度線のどちら側にいるかによって、
どちらかが「流離」状態に陥るのです。
<以下ネタバレします>
この二人の恋愛の、未来における可能性は、
だから、
こちらでもあちらでもなく、
第三の地にしかないことは、
物語が始まってすぐにわかります。
そしてそれが、スイスであることも。
この(誰でも気づくだろう)予想は当たってしまいますが、
ちょっと違っていたのは、
二人は「あちら」と「こちら」に属したまま、
年に2週間だけ会える、というオチです。
これはどういうことでしょう?
シリーズ全体で、もっとも印象に残るシークエンス、
それはまさに、軍事境界線を舞台にした、
「捕虜」交換のそれでしょう。
そこには、厳然とした「戦争中」である事実が、
はっきりと刻印されています。
だから、
ラストのスイスの風景がどれほど美しくとも、
いやむしろ美しければ美しいほど、
民族が分断されているという事実が浮き上がってしまうのです。
そういう意味では、
一見ハッピーエンドに見えるこの物語は、
どうしようもなくアンハッピーだと言えるのでしょう。
このシリーズが、
北朝鮮の人たちを「人間」として描き、
それがヒットの理由だ、という見方は、
間違ってはいないのでしょう。
ただそれは、今に始まったことではなく、
映画の世界では、もう20年前から行われていることです。
また、根本的に「家父長主義」的な部分があることも否めません。
善人と悪人がはっきりしていて、
(唯一、「盗聴者」を除けば)
「継母」を否定的に描くのもよくない伝統です。
ただ一方では、
好感の持てる人物たちも多く、
それはこのシリーズの美点なのでしょう。
富豪の娘と、権力者の息子、という構図は、
「寓話」だから許される設定なのでしょう。
楽しめましたが、
深い意味で、ツッコミどころはやはりある気がします。