2020年12月22日火曜日

『スクールライフ:パリの空の下で』

Zita Hanrot 主演の「パリ郊外」映画、

『スクールライフ:パリの空の下で』(2019)

を Netflix で見てみました。
オリジナル・タイトルは

La Vie Scolaire

です。(日本では劇場公開されませんでした。)


舞台は、パリ北郊の Le Franc-Moisin。
(これは Stade de France のすぐ東側です。)
この「教育困難地区」にある中学校(現実には le collège Federico Garcia Lorca)に、
新しい教育指導主任専門員(CPE;conseiller principal d'education)が着任します。
サミア・ジブラ。
アルジェリア系の父とカリブ系の母を持つ彼女は、
実は、カレシが収監されている刑務所の近くを希望し、
一人の知り合いもいないこの土地に配属されてきたのでした。
彼女の周りには、
癖の強いスタッフ仲間、
教員たち、
もちろん生徒たち、
生徒の親たち……
等がいて、
いわゆる「荒れた」学校空間を構成しています。
メイン、と呼べるほど強いストーリーはなく、
小さなエピソードが重なっていく感じは、
この手の映画の大先輩、
『パリ20区、ぼくたちのクラス』にも似ているかも。

生徒の一人に、ヤニスというアラブ系の少年がいます。
(ムバッペ似です。)
心優しい彼は、でも、もうしばらく前から、
努力するということを放棄しています。
サミアは何とか彼を励まし、
彼が好きだという映画関係の仕事に向かって進ませようとするのですが、
なかなかうまくいきません……

で、実はこの二人が、この映画の2つの極になっているようです。
二人は、もちろん違う世界にいるのですが、
そのそれぞれの世界での位置が似ています。
それをはっきり示しているのが、
ヤニスの父親もまた、
サミアのカレシと同じ刑務所にいるという事実です。
二人は、刑務所の入り口で偶然出会い、
一瞬見つめ合うのです。
途中、2つのパーティーを、
クロス・カッティングで繋ぐ箇所があるのですが、
そこでも、二人の相似性がはっきり提示されるようです。

またこの映画は、「口が悪い」。
辞書に出てない砕けた表現くらいはともかく、
悪口の言い方に品がありません。でも、
不思議なことに、映画全体はウォームなのです。
アラブ系のヤニスと、アフリカ系の親友の会話ときたら、
「へい、汚い黒人! Sale noir !」
「なんだい、このテロリスト!」
みたいな感じなんですが、
この間二人はずっとニコニコしていて、
とにかく、大親友なのです。
道徳的な PC とはまったく違う次元ですが、
個人的には、こういう世界にも親しみを感じます。

そうそう、大事なことを忘れてました。
この映画の監督・脚本には、
Grand Corps Malade が参加しているんです。
彼の監督作品としては、これがありました。


才能ある人ですね。

そして主演の Zita Hanrot もよかった。
(実際の彼女はジャマイカ系。)
『ガールフレンド・イン・パリ』はひどかったけれど、
こちらはよかったです。