2013年2月21日木曜日
BEUR SUR LA VILLE
ジャケットを見れば、
これがB級映画であることはすぐに察せられますが、
それでもこのタイトル
『街のアラブ人』
には抗えません。
http://www.youtube.com/watch?v=j2B-CtzhtfA
予想通りのB級で、
ストーリーもごくベタな感じのひねりが仕込まれていました。でも、
おもしろいんですね。
決して深くはないけれど、おもしろい。
舞台は架空の街Villeneuve-sous-roi。
(ただし Le Parisien の監督インタヴューを読むと、
撮影は監督自身の出身地であるSeine-Saint-Denis で行われたそうです。)
主人公ハリッドは、警察が抜擢した初の discriminé positif という設定です。
直訳すれば「肯定的に区別されたもの」というわけですが、
ここでは、非移民ばかりを採用するとマスコミに批判された警察が、
選択的に移民を採用した結果、
ハリッドがある連続女性殺人事件の責任者となった、ということです。
しかも、こうした「区別」が破綻するように、
あえて「ダメ男」を選んだところが、
彼が意外な活躍をする、というわけですね。
殺人犯は、「モスクの殺人者/金曜の殺人者」と呼ばれています。
事件は、いつもモスクの前で、金曜に起こるからです。
警察は当初、犯人=ムスリムという線で追っていたのですが、
「じゃあ、土曜に起きてれば犯人はユダヤ人で、
日曜だったらクリスチャンで、
月曜だったら無神論者ってわけですか?」
とハリッドは言い放ちます。なるほど。
事件はやがて、麻薬がらみに発展します。
そしてこの映画の醍醐味は、
ギャグ満載の機関銃トークと、
脇役たちのキャラクターでしょう。
ハリッドの警官仲間は、まず臆病なサン・パピエである、
マリ系のクーリバリー(!)。
そしてまだ若いヴェトナム系チャン。
(彼は、Je suis pas nicois ! と言います。
nicois ? これって子音を入れ替えると……)
そしてクリーニング屋さんのパキはパキスタン系。
(そこに預けた洗濯物は、みんなタンドリーチキンの香りがついて戻ってくる!)
古着屋のオネエはひどいポルトガル訛り。
(ポルトガル出身の乳母に育てられたから。)
という面々です。
この映画には、何か深いメッセージが込められているとは思いません。
でも、こうした描き方を、しかも笑いを通して実践することは、
それ自体、多様性に対する力ある肯定感を感じます。
そんなにきれいでもない映画館で、
この作品に笑い転げる人たちがいるのですね。
彼らに、細かくて分かりにくかったギャグを、
ぜひとも解説して欲しいです!
B級、恐るべし。
*YouTube で、全編見られます!
まずはここから
http://www.youtube.com/watch?v=o9NI5OZzQm8
そういえば、
内務省の官吏の役で「アメリ」のお父さんが、
ハリッドのお母さん役でビウーナが、
それぞれちょっと顔を見せています。
アラブものに、ビウーナは欠かせませんね。