2013年2月1日金曜日

『デイヴィッドの物語」


さて今日は金曜日、
会議の多かった今週も終わりです。
定期試験の成績もつけたし、
まあ小さく一段落です。
(大きく一段落は、3月の上旬でしょうか。)

で、
ずっと読むのを楽しみにしていたこの本、

『デイヴィッドの物語』(ゾーイ・ウィカム / くぼたのぞみ訳) 大月書院

を読み始めました。
まだ4分の1ほどですが、
なにか凄いものを読んでいるのが分かります。
ここには「歴史」が語られているのですが、
作家の語りの技術はおそろしく自在で、
歴史ものにありがちな生硬さとは無縁の、やわらかなテクニシャンだと感じます。
そして人間洞察も、ユーモアも、
小さな喜び、小さな悲哀に対する感受性もあり。
世界には、まだまだ凄い作家がいるんですね。

http://www.amazon.co.jp/%E3%83%87%E3%82%A4%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%83%E3%83%89%E3%81%AE%E7%89%A9%E8%AA%9E-%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%82%A4-%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%82%AB%E3%83%A0/dp/4272600516/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1359723848&sr=1-1

本の帯には、こうあります。

「アパルトヘイト崩壊で混迷する南アフリカ。
活動家、スパイ、破壊工作員が暗躍する地下世界の、
歴史の表舞台にのぼらなかった、相矛盾する真実がいまあらわに」

映画『ツォツィ』では、アパルトヘイト「後」の南アが描かれていました。
スラムと高級住宅街が隣り合って……。
そしてこの小説の冒頭は、
アパルトヘイトが崩壊するのは「時間の問題」であるような時期、
つまり1990年前後なのでしょう。
そこに見出される「相矛盾する真実」……

再び帯に戻ると、さきほどより大きな文字で、

「圧倒的なナラティヴ・ヒストリー」

とあります。
なるほど。そうなんですね。
物語を語るのは、デイヴィッドの(将来の)妻であったり、
彼女の母親であったり、
もちろんデイヴィッドであったり、
その父親であったりします。
この後も、いろんな語りが繰り出されてくるはずです。
(厳密には、それは「視点」であり、
どうも書き手も含めた多層構造になっている模様。)

それにしても、プロの翻訳家の仕事で感心する点は、
スピーチ・レヴェルの揺れが伝わってくること。
言葉を読んでいるだけも、
その人物の生きてきた時間が感じられるというか。

南アの内側の声が聞こえる、貴重な一冊です。