2013年2月11日月曜日
ムッシュ・ラザール
遅ればせながら、見てみました、
『ぼくたちのムッシュ・ラザール』。
これは、なんとなく思っていたよりずっといい映画でした。
http://www.youtube.com/watch?v=-RqD5r431Bo
アルジェリアでレストランを経営していたラザールは、
テロで妻と幼い娘2 人を失くし、
モントリオールに渡ってきます。
さっそく、難民申請の手続きに入ります。
けれども一方で、
彼は永住権のある移民であると偽り、
ある小学校の先生として働き始めますが、
こんなことがありえたのは、
前任者の女性が教室で自殺した後であり、
他に引き受け手が見つからなかったという事情があります。
で、物語は、
彼が受け持つクラスと彼、
彼の同僚と彼、
の関係を中心に進みます。
この映画については、
すでに多くのコメントがあるでしょうから、
細かい点に触れるとすれば……
クラスの女子の中に、
優秀だけれどもかなり頑固な感じの生徒がいるのですが、
ラザールは両親との面接時に、
その点を両親に伝えます。
もちろん、とてもやわらかい物言いで。
けれどもやはり頑なな両親は、
ここはあなたの母国ではないから、細かいニュアンスは分からないでしょう、
しつけはいいから勉強だけ教えてください、
と答えます。
そしてその次のシークエンス、
ラザールの部屋にはペーパーバックが何冊か用意されます。
それは、
Hubert Aquin, Prochain épisode
Jacques Godbout, L'isle au dragon
Dany Laferrière, L'énigme du retour
です。
上の2 人は、ともにケベック出身で、
いわゆる「静かな革命」に影響を与えた作家です。
3 人目は、あのラフェリエールですね。
http://tomo-524.blogspot.jp/2011/10/blog-post_20.html
つまり監督(ないし脚本家)は、
これらの作家こそ、
今のケベックを理解するのに不可欠だ、
と言いたいのでしょう。
また彼のクラスには、
『パリ20区、僕たちのクラス』ほどではないけれど、
やはり移民の子供たちがいます。
チリからの男の子、アフリカ系の女の子。
そしてアブダルマリックという名の男の子は、
ラザールに時にアラブ語で話しかけ、
そのたびにラザールは、
「学校ではフランス語で!」
と答えるのです。
(この名前がアラブ系であり、
ラザールとアラブ語で会話できるのは当然だと、
日本のお客さんたちも思っていた、かな?)
監督(ないし原作者)は、ラザールのアルジェリアでの体験を前景に置かず、
それと拮抗する物語をモントリオールに起こしました。
語り過ぎない、抑制のきいた、そしてユーモアも暖かさもある、
いい映画でした。