2013年2月23日土曜日

Vivre au paradis


1997年といえば、
もう今から15年ほども前ということになりますが、
その97年に制作された映画、

Vivre au paradis  『天国で生きる』
 
という映画を見てみました。
 
 
主役を務めるのは、
数日前にご紹介した Mains armées でもヒーローを演じた、
ロシュディ・ゼムです。
 
話し自体は、とてもシンプル。
1960年のナンテール。
そこにはビドンヴィルと呼ばれる小屋が立ち並び、
お世辞にも衛生的とは言えない環境の中で、
アルジェリア移民たちが暮らしています。
その中の1人である主人公は、孤独に苛まれ、
なんとか妻と子供たちを呼び寄せるのですが、
彼らはナンテールの現状に落胆を隠せません。
そこから主人公の、アパルトマン暮らしを求める生活が始まるのですが、
結局物語の最後まで、そのささやかな夢は実現しません。
 
1965年生まれの監督は、
歴史が忘れかけているアルジェリア移民第1世代を描きたかった、
それはぼくのアイデンティティーの1部だから、と語っています。
この映画、まさに監督が意図した通り、
第1世代の苦闘を力強く伝えてきます。
 
途中、この事件も出てきます。
 
 
この事件、実はこの小説でもみっちり出てきます。
 
 
50年、経つわけですね。

そして映画の終わりは、1962年7月5日、
つまりアルジェリア独立の日です。
その直前、フランスに「同化」しようとする夫は、
アラブの伝統を尊重する妻を一方的にしかりつけ、
家を追い出していました。が、
独立達成の知らせに、夫は妻に言うのでした、
アルジェリアに帰ろう、と。
けれど、彼らも、また観客も、彼らが帰りはしないだろうことを知っています。
アルジェリア本国は、彼らに帰還を奨励しなかったからです。

エンディングのテロップで、
1970年、このナンテールのビドンヴィルが解体されたとき、
彼らがついに、アパルトマン(HLM)に移ったことが知らされます。

とても地味な映画ですが、
重要な作品だと思いました。
2回見ました。
(そうそう、妻の年上の友人で、FLNを支援する女性として、
ヒアム・アッバスが出演していました。
やっぱり、存在感のあるいい女優だと思います。)