2013年9月30日月曜日

Regarde-moi

このところ、選んだ映画がやや入り込めない感じもあったのですが、
今日見た作品、

Regarde-moi

これはよかったです。

http://www.youtube.com/watch?v=bEwUqrsOtEg

時間的舞台はほぼ「1日」のみ。
その日は、アーセナル入団が決まったジョーが、
シテを離れる日です。
話の作りは2部に分かれていて、
実はそれぞれ同じ時間、同じ場所なんですが、
前半は男の子たちの視点、後半は女の子たちの視点から、
描いています。

もちろん、こうした試み自体は、
まあ、特別に目新しいものではないでしょう。
他の映画でも、何度か見た記憶があるし、
小説なら、もっともっともっと込み入っているものがあります。

でもこの映画の良さは、そこではありません。
ぐっと良くなるのは、後半、女子たちが動き出してからです。
監督が若い女性だから、と書くのは安易な気もしますが、
やはり、それは関係あるでしょう。

家族①(黒人)
父・ユダヤ人  
母・ムスリマ
長男(ジョー)・アーセナル入団が決まっている。ジュリと恋仲。
長女(メリッサ)・中絶手術を受けた(という噂)。ヤニックが本当は好きだが……。
次男  カリドゥー

家族②(黒人)
母・民族衣装を着ている。
長男(ムース)・白人のダフネと付き合っている。
長女(ファティマタ)・ジョーが好き。でもまったく相手にされない。
小さな妹、弟

家族③(白人)
父・酒浸り。テレビの前のカウチから動かない。
娘(ジュリ)・ジョーと恋仲。

家族④(白人)
長男(ヤニック)・メリッサと付き合っていた。今も好き。
長女(エロイーズ)・おしゃれ。もてる。

ざっとこんな感じでしょうか。
ここに絡み合った人間関係が展開するのですが、
その中心となるのは、赤で示した3人の関係でしょう。

ファティマタは、ジョーが出発するその日、
ビヨンセのような金髪のかつらを付けて現れます。
ワル仲間の女の子たちも、男の子たちも、
大爆笑&からかいの嵐です。
兄のムースも飛んできて、すごい勢いで起こります。
しかも挙句の果てに、このかつらがポトリ。
再びの爆笑の中で、
いっぱしのワルであるファティマタも、
泣きながら家へ帰ります。

でもなぜ、彼女はこんなかつらをかぶったのか。
それはもちろん、ジョーに気に入られたい一心からです。
ジョーの恋人ジュリは、ブロンドの長髪をした白人。
「自分のグループ(=黒人)」の男を白人に奪われたファティマタは、
自分も白人になろうとしたのです。

(以下ネタバレあり)

そして夜、
ジュリとのデートから帰ってきたジョーに、
ファティマタは飛びついてキスします。
ふりほどくジョー。
なんども、なんども。
ついにジョーは彼女を平手打ち。
ファティマタは彼の顔に唾を吐きかけます。
(大好きなのに! こんなことしかできない!)

その後ファティマタは、ワル仲間の女の子たちと、
ジュリをリンチします。
傷を負い、血を流し、家に帰りついたジュリ。
けれども父親は、いつもの通り飲んだくれて寝ています。
ジュリは泣きながら、寝ている父親の腕を取り、
自分を抱かせるのです。(かわいそう!)

やがてジュリは立ち上がると、
電気シェーバーを手に取り、丸刈りにしてしまいます……。

そして映画のラストは、数か月後、
ジョーに呼ばれたジュリが、ロンドンに旅立つ場面です。
ダフネやエロイーズといった、白人の友達とハグし、
彼女はクルマへ。
そしてやがてそのクルマの行く手を、ファティマタが立ちふさぎます。
助手側に回り、ジュリと見つめあうファティマタ。
そしてファティマタが、開いた手のひらを窓に押し付けると、
ジュリもまた、窓越しに手を合わせるのです、
少しだけ泣きながら……。

よかったです。
もう1回見るでしょう。