2021年11月23日火曜日

『バルスーズ』

今週の大学院ゼミでは、

『バルスーズ』(1974)

を見ました。
原題は Valseuses。
「女性バレリーナ」ですが、
隠語として別の意味もあります。


日本ではあまり知られていないようですが、
アラン・ドロンとベルモンドの次の時代の幕開けを告げる映画だと、
ピエール・マイヨは指摘しています。
ゼミでは、その文脈で見ました。

主演は、ジェラール・ドパルデューとパトリック・ドヴェール。
とにかく、
これは極めつけの「不道徳」な映画です。
まず冒頭、この二人が画面の登場するわけですが、
それは、
スーパーのカートに乗ったドパルデューを、
パトリックが早足で押しています。
ふざけた登場です!
しかも二人は、中年女性をつけ回している最中で……


彼らは、殺人を犯したりはしませんが、
細かな不道徳はいくらでもやらかす人間なのです。

でこの二人は、
クルマを盗んだことがきっかけで、
ある若い女性と仲良く(?)なります。
彼女は、勤め先の美容室の店長の愛人で、
まあ、セックスをさせることに抵抗がありません。が、
実は彼女は「不感症」なのです。
でこの「不感症」と、
男たちの持つピストルが、
大きな象徴性を持つことになるように見えます。
彼女は、ピストル(=パターナリズム)を持つ男性とはダメで、
初めてピストルを持たない男性を関係したとき、
やっと「感じる」ことができるのです。
それは、抑圧から解放された女性像のようにも見えるでしょう。

パトリックの役名は「ピエロ」で、
これは『きちがいピエロ』を踏まえているでしょう。
また、彼ら3人の逃避行は、
ボニー&クライドを思い出させもします。
また彼らの他に、
刑務所から出所してくる女性(ジャンヌ・モロー)や、
ピエロたちと初体験をする女性(イザベル・ユペール)なども登場し、
「読み」を誘ってきます。