『バルスーズ』(1974)
を見ました。
原題は Valseuses。
「女性バレリーナ」ですが、
隠語として別の意味もあります。
日本ではあまり知られていないようですが、
アラン・ドロンとベルモンドの次の時代の幕開けを告げる映画だと、
ピエール・マイヨは指摘しています。
ゼミでは、その文脈で見ました。
主演は、ジェラール・ドパルデューとパトリック・ドヴェール。
とにかく、
これは極めつけの「不道徳」な映画です。
まず冒頭、この二人が画面の登場するわけですが、
それは、
スーパーのカートに乗ったドパルデューを、
パトリックが早足で押しています。
ふざけた登場です!
しかも二人は、中年女性をつけ回している最中で……
彼らは、殺人を犯したりはしませんが、
細かな不道徳はいくらでもやらかす人間なのです。
でこの二人は、
クルマを盗んだことがきっかけで、
ある若い女性と仲良く(?)なります。
彼女は、勤め先の美容室の店長の愛人で、
まあ、セックスをさせることに抵抗がありません。が、
実は彼女は「不感症」なのです。
でこの「不感症」と、
男たちの持つピストルが、
大きな象徴性を持つことになるように見えます。
彼女は、ピストル(=パターナリズム)を持つ男性とはダメで、
初めてピストルを持たない男性を関係したとき、
やっと「感じる」ことができるのです。
それは、抑圧から解放された女性像のようにも見えるでしょう。
パトリックの役名は「ピエロ」で、
これは『きちがいピエロ』を踏まえているでしょう。
また、彼ら3人の逃避行は、
ボニー&クライドを思い出させもします。
また彼らの他に、
刑務所から出所してくる女性(ジャンヌ・モロー)や、
ピエロたちと初体験をする女性(イザベル・ユペール)なども登場し、
「読み」を誘ってきます。