2021年11月3日水曜日

『監禁面接』

エリック・カントナ主演のミニ・シリーズ、

『監禁面接』

を見てみました。


(原題は Dérapages。
「横滑り」のことですが、
ここでは、事態がとんどん思わぬ展開を示すことを指しているのでしょう。
複数形だし。
となると、この恐ろしげな邦題は、
ちょっとな~、とも思いますが、
これは原作小説の邦題を、
無視できなかった結果とも言えるでしょう。)

設定はそれなりに現実的ですが、
そこで展開する物語はかなり荒唐無稽で、現実離れしています。
主人公はアラン。
57歳、月収500ユーロ。
二人の娘は独立し、今は妻と二人暮らしです。
彼は、70人程度の規模の会社で、
人事部長として働いていましたが、
6年前にリストラされ、
それ以降は、求人広告を見ては仕事を得る生活。
アパルトマンのローンも残っていますが、
それよりなにより、
彼の自尊心がボロボロに傷ついています。
「失業者」という自分を、どうしても受け入れられないのです。
だから最近の彼は、かなり短気で暴力的。
自己中心主義的でもあります。
そんな彼から、妻や娘たちの心も、
薄皮が剥がれるように、遠ざかってゆきます。
また彼の長女は妊娠中ですが、
その銀行員である夫、つまり義理の息子とはそりが合いません。
次女は弁護士で、
父親のケース(その内1つはクレテイユの裁判所)を担当することになります。
……と、ここまでは、現実的です。

物語は込み入っています。
ある大企業が、大リストラを担当する重役を選ぶため、
偽装テロ事件を企画します。
そんな中でも、会社を守ろうとするのは誰か、
というわけです。
(ひどい話です。)
で、その企画にモニター越しに参加し、
重役を評価する仕事があるわけですが、
その仕事が、
新規採用のためのテストに使われることになります。
アランは、そこに参加することになります。
ただ、この馬鹿馬鹿しく非人間的な企画の途中、
アランが大きく「横滑り」を見せるのです。
彼は、用意してあった銃を抜き、
本物の人質事件を起こすのです……

物語はこの後も、
「横滑り」を続けます。
このあたりを、おもしろいと感じる場合もあるかもしれませんが、
わたしは、ピンときませんでした。
失業者と新自由主義者の対決、
という構図の中で、
権威主義的で暴力的な主人公の、
ある種の逆転を描いているとも言えるのでしょうが、
残念ながら、
このアランが好きになれない。
そこが苦しいところです。


アランの次女を演じたのは、
『パリ警視庁:未成年保護特別部隊』
の中で、
暴行されて妊娠し、
その子を産む女性を演じていたアリス・ドゥ・ランクザン。
彼女は、Noces や『水の中のつぼみ』にも出てましたね。


またアランの妻は、これらに出ていました。



後者は、ソフィー・マルソー主演ですから、
日本版が出てもいいと思うんですが。
(この監督、かなり好きです。)