院生のセレクションで、
『淵に立つ』(2016)
を見ました。
カンヌに出品された作品です。
変な言い方ですが、
これ、小説で言ったら、
芥川賞レベルだと感じました。
見ている間、なんというか、
いわゆる「純文学」のいい小説を読んでいる感覚でした。
町工場を経営する一家は、
夫婦と小学生の娘。
そこに、男の「古い友だち」が訪ねてきて、
これがいかにもワケアリで、
男は、その友だちを雇い入れ、
かつ、一緒に自宅に住まわせることにします。
ただしこれは、妻への相談は一切なしです。
男は、食事中も新聞を読み、
家事はもちろん、
娘のことにもほとんど興味を示しません。
そしてもちろん(?)、
妻は、この友だちと接近します。が、
一線を越えようとした友だちを妻がはねつけたとき、
この映画の、真の始まりが訪れます……
男は、徹底的にダメなヤツです。
自己中心主義で、ナルシシストで、
他者への想像力を欠いています。
妻はクリスチャンで、「いい人」です。
なぜ彼女が、こんな男と結婚したのか、
これが謎です。
男のダメさは、根っからのもので、
昔はやさしかった、みたいなことではないように見えるからです。
かなり厳しい映画ですが、
僭越ながら、
90点を付けたいと思います。
マイナス10点は何かと言えば、
たとえば冒頭の、母親を食べる昆虫のエピソード。
これ、もう飽きた。
これは悪い意味で「純文学」的なところだと感じます。
でも、「赤」の使い方も巧みだし、
演者もいいし、
もちろん90点は「とてもいい」という意味です。