2023年2月13日月曜日

『黒騎士』

『ロビンフッドの冒険』をアマプラ見終わったら、
そのままオススメされたのがこれ、

『黒騎士』(1952)

でした。
ロバート・テイラー、
エリザベス・テイラー、
ジョーン・フォンテインという豪華キャスト。
アカデミー賞作品賞を取った映画です。
ウォルター・スコットが1820年に発表した小説、
『アイヴァンホー』
の映画化です。
(映画も、原題は『アイヴァンホー』です。)


なぜこの映画がオススメされたのかといえば、
それは、この映画と『ロビンフッドの冒険』は、
時代も場所も共通しているからです。
リチャード獅子王が十字軍に行っているのも同じ、
弟のジョンが兄の王位を狙っているのも同じです。
(ジョンは、利己的で思慮のない人間として描かれていて、
まあ実際、ダメな王としても有名ですが、
彼はその後、王にはなったわけです。
困ったものですね、こんなトップじゃ。
まあ、21世紀にも、似たようなトップは確かにいるようですが。)
主人公は、ノルマン人ながらジョン王と対立し、
リチャード獅子王に心酔するアイヴァンホーですが、
彼の協力者として、
ロビンフッドも登場します。
(ちなみに、またフランス語は使われていません。)

備忘のためにちょっと書くと、
背景にあるのは、
フランスから来たノルマン人と、
もともといたサクソン人の対立です。
ただし、リチャード獅子王に限っては、
良き王として、
両側から支持されています。
一方ジョンは、側近のノルマン騎士たちとつるんでいますが、
サクソン人を迫害しており、
彼らからは疎まれています。
弓の名手ロビンフッドは、サクソン人たちのリーダーで、
アイヴァンホーは、(さっきも書きましたが)
ノルマン人騎士ですが、ジョンではなくリチャード獅子王側です。

ただ『黒騎士』には、
『ロビンフッドの冒険』にはなかった要素も入っています。
それは、リズ・テイラー演じるユダヤ人女性レベッカです。
彼女と父親は、ユダヤ人としてスペインを追われ、
ここまで来ています。
質素な生活ですが、
実は父親は金融家のようで、
ユダヤ人ネットワークを使って大金を用意することもできます。
(捕虜になったリチャード獅子王の身代金です。)
またオーストリアの商人にも、金を貸しています。
そしてレベッカはアイヴァンホーを愛しますが、
彼に恋人がいるのを知り、
また宗教的戒律から、
彼への思いを断ち切ります。
(本人は、気の迷いだった、みたいなことを言ってますが、
たぶんちがう。)
この、ディアスポラの民の政治的立場、
ノルマンにもサクソンにもつかない、
自分たちに「国」はない、という立場の表明は、
この映画に深みを与えています。
(グローバル・ヒストリー的な印象です。)

この映画、
昨日までは見る予定などまったくなかったのに、
見てみたらそれなりにおもしろかったです!