2008年11月1日土曜日

宗方姉妹


このところ、完全に『優雅なハリネズミ』と谷口ジローにハマリきってます。で今日は、『ハリネズミ』に登場する小津安二郎の映画、『宗方姉妹』を見ました。(『むねかたきょうだい』と読ませるようです。)

これは、1950年の作品で、主役は画像の2人、田中絹代(左)と高峰秀子です。この2人が、「古い/新しい」価値観を代表していて、その父親は、おなじみ笠智衆です。ちなみに、田中の夫が山村聡、恋人(?)が上原謙。これはこれは、大変な豪華メンバーです。

この映画、初めて見ました。小津の中でも、マイナー作品と言っていいと思います。というのも、DVDボックスにも収められていないし、近所の2軒のレンタル・ビデオ屋さんには、置かれていなかったからです。(アマゾンで買いました、奮発して!)

『ハリネズミ』に出てくるのは、笠と田中がしゃべっている場面。苔寺を訪れたあとで、その庭が美しかったこと、特に、そこに落ちていた一輪の椿が鮮やかだったことを語り合います。

椿は、le camélia です。(『椿姫』なら La Dame aux camélias ですね。)この花が、『ハリネズミ』の中で何度となく現われ、さまざまな解釈を誘います。

そういえば昔、『都市空間の文学』という、とても話題になった本がありました。名著、と言っていいと思います。例えば『舞姫』なら、あのベルリンの大通り、ウンテル・デル・リンデン(でしたよね?)が、主人公の住む世界と、恋人の住む世界の境界線であり、それは現実のものでありながら、ある象徴的な価値をも負っている、というような話でした。

この『ハリネズミ』を読んで、久しぶりにそのことを思い出しました。というのも、主人公たちが住むアパルトマンは、空間的に上下左右に構成され、その廊下は、いくつもの世界を断ち切りながら、同時つなげているものとして出現しているからなんです。また管理人の部屋は、いわば二重構造になっていて、奥の部屋は(管理人の隠された美意識同様)外からは見えないのです。

バルベリさんが、どこまで意識的に組み立てたかはわかりませんけど、まったく無意識だったとも思えません。そう、そのへんも、水曜日に訊いてみましょう。

             ◇

実はわたし、この4月から今の明治大学理工学部というところでお世話になっているのですが、考えてみたら、まだここに来て7ヶ月しか経ってないんです。なんだか毎日濃いので、その何倍か経っている気がします。まあ8月までは、「まいにちフランス語」もあったし。

それはともかくあと2ヶ月。なんとか、しのぎ切りましょう!