この前の「バルベリ&谷口」の会のとき、好きな画家は? という質問に、谷口さんはエドワード・ホッパーの名前を挙げてらっしゃいました。実は私も、ホッパーの絵だけで一冊になった絵葉書集を使い切った(つまり、出し切った)ことがあるくらいには、好きな画家です。
で、今日ある現役女性詩人の本を読んでいて、なんとなく、ホッパーのことを思い出す詩がありました。「点灯」という詩です。
アパートに戻ると
留守番電話のランプ
赤く
小さい生き物みたいな点灯を
まっさきにのぞく。
誰からも電話のなかったことは
すぐにわかる。
ともしびのように
赤い豆つぶが一日
私の代わりを務めて
私と同じままに誰からも声をかけられずにいたと知る。
都会の
回収されないこの一瞬。
私は
街に撒かれた電話機の豆つぶの赤さを頭の中にちりばめる。
それを 都会の星のようにおもう。
ね、ちょっとホッパー的な、孤独感というか、寂しさというか、ありますよね? この詩を書いたのは、木坂涼という女性です。(パートナーは、これも詩人のアーサー・ビナードです。)
彼女の詩は、実はもっと軽やかで、おしゃれな感じのがたくさんあります。たとえば、「17才」。
ねこのように
ブルブルブルってできたら
とってもらくになれるのに
あ、単に「おしゃれ」じゃありませんでした。ではもう1つだけ。「一人の正しい使い方」。
きゆっと孤独が
あたしを抱いてくれる時があって
あたしはコロッとだまされる
今
何かした?
う~ん、軽やかなんだけど、それだけじゃないですね。わたしみたいなオジサンが読んでもいいのだから、若い女性が読むと特に、きっと身につまされるんじゃないかなあ、と思います。
そうそう、昨日は吉本隆明の84歳の誕生日だったんですね。いつか、吉本さんの本を、じ~っくり読んでみたいです。学生の頃もまあ読みましたけど、きっと分かってなかったはず。今なら、少しはましな読み方ができそうな気がします。(J'éspère !)