2015年7月1日水曜日

Bye-Bye


『マルセイユの決着』を見たときには、
舞台となったいくつかの通りをストリート・ヴューで確認したのですが、
そうすると、もっとマルセイユが見たくなってきて、
以前見て、
マルセイユの街並みが、
映画そのものの印象に強く影響していると感じられた映画、

Bye-Bye   (1995)

を、久しぶりに見てみました。
これ、やっぱりいい映画です。
20年も前の映画ですが、
まったく古びていませんでした。
やさしさも、人生の疲れも、暴力も、悲しみも、エロスもあります。

上の画像は、DVDもジャケ写なんですが、
これだけ見ると、あまりそそられません。が、
実はこれ、麻薬のディーラーの手伝いを始めようとしていた弟を、
兄がアジトに取り込んで奪還し、
その後二人で逃げいていく場面なんです。
画像だけでは、考えもしない状況ですが、
そう思って見ると、ちょっと違って見えてきます。

https://www.youtube.com/watch?v=uK5vI7npgjs

イスマエルとムルードの兄弟は、
パリからマルセイユに、
オンボロ車に乗って引っ越してきます。
行く先は、伯父さんのアパルト。
12歳のムルードは、近々チュニジアに帰ることになっていますが、
本人は、ゼッタイ行きたくない、と思っています。
伯父さんのアパルトは狭いけれど、
伯母さんはやさしいし、意地悪したりはしません。
でも、兄弟にとって、
生きていくのは簡単じゃありません。
イスマエルは、
伯父さんに紹介してもらった工事現場の仕事を失い、
弟は、いとこと一緒に、
麻薬を売りさばこうとします。
まだ中学生くらいなのに。

でもこうして書こうとすると、
この映画が、
とりわけストーリーがあるわけじゃないことに(やっと)気づきます。
見ているときは、
引き付けられていて、
そんなことにさえ気づきませんでした。

ひとつ、明確には示されない重要な要素があります。
それは、両親がチュニジアへ帰り、
兄弟がパリを離れるきっかけとなった火事についてです。
不注意からこの火事を起こしてしまったのはイスマエルなんですが、
実は彼のもう一人の障害がある弟が、
この火事で亡くなってしまったのです。
イスマエルは、このことの罪悪感に、
絶えず責められています。

また、麻薬ディーラーたちの縄張り争いに関して言うと、
そこには、ヨーロッパ―系白人と、アラブ系の対立があります。
この前者は人種差別的で、
ブルキナ出身の男性と白人女性の野外結婚式に押しかけ、
新郎を愚弄したりもします。
(英語で bobo と言うと、
ブルキナ系の人を指すことがあるようですが、
映画内では、この同じ bobo という語が使われていました。)

ちなみに、イスマエルは、
ヤスミンという、やはりアラブ系の女の子と関係を持つのですが、
それは、ヤスミンを、
彼女のカレシであるヨーロッパ系男性から奪う結果になります。

マルセイユについて言えば、
坂が多く、しかも細い路地の多いこの街の雰囲気が、
やはりよく出ていました。
そしてイスマエルが仕事に行くとき乗るバスは、
海沿いを走るのでした。

久しぶりに見て、
こんなに良かったっけ?
と思ったのでした。

*イスマエルを演じた、チュニジア系のサミ・ブアジラと、
ヤスミンを演じたノザ・クアドラは、
↓ でも、夫婦を演じていました。

http://tomo-524.blogspot.jp/2013/10/omar-ma-tuer.html

こちらは2011です。
二人とも、大人になっていました。