3週間ほど前に、ここで
http://tomo-524.blogspot.jp/2015/06/amour-sur-place-ou-emporter.html
について触れました。
アラブ系の女性と、アフリカ系の男性の、
ベルシーのスタバを舞台にした恋愛映画でした。
で、
今日見たのは、
La première étoile
ヨーロッパ系白人女性と、
アフリカ系(というかカリブ海系)男性の、
恋愛ものでした。
といっても今回、二人は夫婦であり、
3人の子供がいます。
住まいはクレテイユのHLMで、
経済事情はよくありません。
とはいえコメディーなので、
全体のトーンは明るいです。
https://www.youtube.com/watch?v=2z6sFnnLZ84 全篇版
ストーリーの中心にあるのは、スキー旅行です。
お金がないのに、子供たちに安請け合いした父親ジジェ。
でも今回は、もし約束を守らなければ、
わたしは出ていくと妻が宣言し、
なにがなんでもお金が必要になります。
そしてなんとか、旅行には行けるのですが……というお話。
この映画の根本的な「違和感」は、
黒人がスキーをする、という点です。
これは Amour sur place ou à emporter でも出てきたんですが、
「黒人は水泳とスキーはしないよね」
という、ある種の決まり文句があります。
これは、なにも「人種差別」ということではないようで、
それが証拠に、今回の映画でも、
ジジェの子供が、黒人の友だちに「スキーに行く」と話したところ、
彼らは大爆笑するのです。
また、ジジェの母親
(『ロミュアルドとジュリエット』のジュリエット役の女優による)
も、行きつけの美容室で同様の展開に立ち会います。
(ただこちらでは、「何が悪いの?」という女性もいますが。)
この決まり文句を前提にして、
それをいわば反転させるように作られたのが、
この映画ということになるのでしょう。
そして1つ、とても印象的だったエピソード。
旅先の雪山で、「スター誕生」的なイベントがあり、
そこにジジェの娘が出場したのですが、
彼女の歌う La montagne(1964) が、泣かせます。
(1 07 15秒あたりから)
このJean Ferrat の歌は、
単に山は素晴らしい、と言っているのではありません。
歌の冒頭は
「ひとり、またひとり、彼らは故郷を後にする、
生活費を稼ぎにゆくのだ、
生まれた土地を遠く離れて。
彼らはずっと夢見ていたのだ、
都会を、その秘密を、
フォーマイカを、映画館を」
そして、警官や公務員なんかになり、
HLMに住み、ホルモン漬けの鶏を食べ、
自分の選んだ人生を生きてゆくのだ、退職の日まで……
でも、とジャン・フェラは言うのです、
やっぱり山は素晴らしい、と。
https://www.youtube.com/watch?v=-RijiCk9H5k
この歌を、
カリブ出身の家系の少女が、
雪山で歌うこと。
ここに、この映画の1つのハイライトがあるのは間違いないでしょう。
ジャン・フェラの父親は、ロシア系のユダヤ人だったそうです。
ジジェたちとは違う道程ですが、
「生まれた土地を遠く離れ」た点は、
共通しているわけですね。
主役のジジェを演じたリュシアン・ジャン=バチストは、
監督でもあります。