2021年10月30日土曜日

『やがて魔女の森になる』


好きな詩人はたくさんいますが、
現役の詩人で、ということになれば、
わたしはまず川口晴美さんの名を挙げます。
すごく好きなんですが、
もう、どこがというより、
リズムというか、呼吸というか、
読んでいて、とてもシンクロする感じがするのです。
特に、1行目。
どの詩でも、
1行目はすごくいい。
ああ、川口さんの詩だ、と感じます。

その川口さんの新詩集、

『やがて魔女の森になる』

を読みました。
もちろん、いいです。
気の利いた批評はできませんが、
わたしはとても好きです。

思いつくまま、一部分だけ引用します。
友だちに、スイカのおすそわけをしようとするのです。

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先週ともだちがわけてくれたサクランボはきれいだった
出かけるついでに朝の駅で待ちあわせて受け取って
夜の部屋でひとり食べると光の味がした
いつまでもからだのなかが明るむみたいに
思い出して
届けに行く
スイカスイカとペダルを踏めば
やがて切りわけて食べるひとの唇を濡らしながら
からだのなかを甘くゆるませる雫は
薄い血のように見えないところに滴って
体温に近づいていくだろう
触れあって
混じってゆくわたしたち
汗と雨のように
果物と果物のように
果物とからだのように
(「スイカタイフウ」)

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素晴らしい……