今日は大学の仕事で、朝10時に中野サンプラザ前に集合しました。そのあと、もろもろで2時間ほどかかる予定だったのですが、意外に早く11:20には終了。で、そのあと新宿の紀伊国屋に向かったのですが、そのビルに入る直前、ふと目に入ったサクラヤwatch 館へ。というのも、愛用の swatch(オークションで3800円)が、どうも調子が悪いからです。swatch は好きなのだけれど、こういう時は、「修理不可」というswatch 最大の弱点が、露呈してしまうわけですね。
とりあえず、ブルガリやカルティエを横目で眺めた後、swatchのある6階へ。店員さんは男女1人ずつ。けれど今客はわたしだけ。そしてゆっくりと、やっぱりなかなか面白いのがあるなあ、などと思いつつそのあたりをぶらついていると、背後で、1つ、2つ、3つと、時計の鳴る音が。振り返ると、壁一面にかけられた時計が、順に鳴り始めているのです、12時を打つために。
わたしが何の気なしにそちらに近づいてゆくと、なんだかそれを待っていたかのように、今度は一斉に、そこら中の時計が鳴り始めたのです! 小さな6階のフロアーは、まるで1つのスピーカーになったよう。わたしと店員さんは、スピーカーの内部に閉じ込められているようです!
今は東京中が12時。
その時、「東京詩」ゼミでも取り上げた、この歌がよみがえりました。
炎昼いま東京中の一時打つ 加藤楸邨
「炎昼(えんちゅう)」という季語は、1938年(昭和13年)に出た山口誓子の句集『炎昼』以来広まったものだそうです。そしてもちろんこの歌は、「真夏」の1時を指していて、今日のサクラヤは梅雨時の12時だけれど、「東京中」という想像の方向を与えてくれたのは、やっぱりこの歌だったろうと感じました。ただ今はここが12時だけれど、1分後には、2分後には……
で結局、swatch、買いました。夏物のアルミ時計。値段は、安いブルガリの20分の1くらい。でも、気に入りました。
*ダリの「溶ける時計」の絵、ご存知ですよね? ただ図像では、溶けているのは時計ではなく……