2015年6月13日土曜日

Amour sur place ou à emporter


このDVD のジャケット、
背景にはエッフェル塔、
その手前には、このカップル。
まあ、これだけで、
だいたいどんな物語か想像がつこうというものですね。

https://www.youtube.com/watch?v=QjOf1MLWWRc 予告

https://www.youtube.com/watch?v=3cBdSbgJiPE 全篇版・画質×

アルジェリア系のアメルは29歳。
ベルシーのスタバの店長で、
10区で一人暮らしを謳歌しています。
彼女の親は、バリバリ旧タイプと言うほどではないにしても、
娘の結婚相手としては、
基本アルジェリア系、
まあどうしてもというならヨーロッパ系、
でもアフリカ系だけはやめて、
という感じ。
アメル自身は、女友達と、
互いの性生活についてもあけすけに、
笑い交じりに話すし、
まあ言ってしまえば、なかなか「お盛ん」です。
スタバの、しかも新しく開発されたベルシーの
(メトロの、クール・サン=テミリオン駅からすぐ)
店で働いているところなどは、
とりわけ「今の女性」な感じです。

マリ系のヌーンも同年代ですが、
ユモリスト(フランス風ピン芸人)を目指していて、
とりあえずバイトで入った先が、
アメル店長のスタバでした。
父親は3人の奥さんがいますが、
彼自身は、とりわけモテルわけでもありません。
(もてないわけでもありません。)
彼のところでも、
結婚相手はアフリカ系、
だってフランス生まれでフランス国籍を持ってるんだから、
あえて白人と結婚する理由はないだろう?
なんて言われてしまいます。
で、そんな二人の恋物語です。

この映画、じつは芝居の映画化なので、
セリフの量が多く、
またそのセリフがかなりひねってあります。
(You Tube には、芝居がまるまる上がっています。)
つまり、
なにか映画にすべき強いモチーフがあったわけではないようです。

わたしが面白いと思ったのは、
もちろん第一には、
アラブ系の女性とブラック・アフリカ系の男性の恋だということ。
この民族的組み合わせは、
フランス映画ではとても珍しいです。
(これがそうでした。
http://tomo-524.blogspot.jp/2013/09/les-keufs.html )

そして二点目は、
あれほど奔放に話し行動するアメルなのに、
いざアフリカ系の男性との付き合いを父親が反対すると、
あっさり結婚する気はないと答えてしまいます。
もちろん本気じゃなかったんでしょう。
でも、それをたまたまヌーンが聞いてしまい、
それが理由でヌーンが去っていったとき、
アメル追っていかないんですね。
つまり、本気じゃなかったはずなのに、
かといって、まったく嘘でもなかったようなのです。
どんなに表面的には今風でも、
やっぱり、アラブ的な親との問題は、
彼女も抱えているわけです。
(『シェバ・ルイーザ』のヒロイン、ジェミラも、
やっぱり29歳でした。
違うけれど、同じなんですね。)

そして結末ですが、
まあ、あまり大きな意味を与えないほうがいいようです。
この点でも、
やはり芝居の翻案なんですね。
おもしろかったけれど、
芝居な感じが強かったです。
主演のアメルは、監督でもあります。

*全篇版の42分23秒のところで、アメルがこう言います。

Téma !

これって、mater 「俗:(盗み)見る」のverlan です。
ここは命令形ですから、
「見てて!」
くらいでしょうか。
これ、日本の辞書にはまだ出てないと思います。