2015年6月30日火曜日

Traversée de Paris

『マルセル・エメ傑作短編集 』(中公文庫) 所収の、「パリ横断」。
これをクロード・オータン=ララが映画化したのが、

Traversée de Paris

です。
制作は1956年ですが、
舞台となっているのは、ドイツ占領下のパリです。

https://www.youtube.com/watch?v=Zvf-32o2DzE  ←全編版

失業中のタクシー運転手マルタンは、
たまたま知り合った画家のグランジルに、
ひと儲けしないかと誘います。
マルタンは、
闇市で売る肉を密かに運ぶ仕事をしているのです。
そして二人は、
オーステルリッツ橋から近いポリヴォー通りから、
モンマルトルのルピック通りまで、
4つのトランクに入れた10キロの豚肉を運ぶことになります。
深夜のパリを、
大きなトランクを提げて歩く二人の男。
彼らは、メイン通りを避け、
裏道をたどってゆくのですが、それでも、
肉の匂いに引き寄せられた犬やら、
警官やら、
ドイツ兵やら、
をかわさなければなりません。
その道中そのものが、このロードムーヴィーの醍醐味です。

占領下のパリ、というのは、
しばしば本などで言及されるわけですが、
その時の庶民の感覚というのは、
イミイチ想像しにくいものです。
この映画では、細かな描写を通して、
そのへんの機微が伝わってきます。
当然ですが、みんなその状態を喜んではいないわけですね。

印象に残ったのは、あるカフェ(?)で働いていた少女です。
彼女は、胸に黄色い星をつけたユダヤ人で、
店主に搾取される形で働かされているのです。(34分あたり)
そして画家のグランジル(ジャン・ギャバン)が、
実はナチと懇ろで、
闇の仕事などする必要のない身分だというのも、
興味深い設定でした。
(原作では、彼の扱いがだいぶ違うのですが。)

ちなみに、闇の肉を卸しているのは、ルイ・ドゥ・フュネス。
これは、ぜひ日本版も、と思いました。