2015年6月28日日曜日

Superstar

カド・メラッドとセシル・ドゥ・フランスが共演している、

Superstar (2012)

という映画を見てみました。
(日本版DVDは未発売のようですが、
WOWOWで放送されたことがあったようです。
その時のタイトルは、『ある朝突然、スーパースター』。)

https://www.youtube.com/watch?v=y31zciTAQkE

マルタン(←フランスで一番多い名前)は、
ごく平凡な、有名になることなどなんの興味もない、
独身の(まあ一応、さえない、と言っていいでしょう)中年男です。
でも、職場であるリサイクル会社では、
そこで働く障害がある人たちに慕われる存在ではあります。
そんな彼が、ある朝、有名になったのです。
メトロに乗れば、話しかけられ、サインをせがまれ、
道を歩けば、写真を求められるのです。
でも、その理由が、まったくないのです。
テレビが、ラジオが、押し寄せてきます。
ネットには、彼の画像が、映像が、あるいは子供時代の写真まで、
次々にアップされ、
今や彼は「セレブ」なのです。
でも、理由はわからない。
マルタンは、それを知るためにだけ、
テレビ出演を受けますが、それは思いもしない方向にそれ……

<以下ネタバレあり>
マルタンはこの後、
突然、「彼ら」から嫌われ始めます。
でもなぜ?
有名になった理由も、嫌われた理由も、
結局、最後まで示されないのです。
この映画のポイントは、そこにはないのです。
というか、むしろそこにないからこそ、
ネットやメディアを通した「彼ら」の視線の恐怖が、
得体のしれないものとして迫ってくるのです。
コメディだろうとおもって見始めたのですが、
これはサスペンスでした。

とてもよくできた映画だと思います。
それぞれの場面がしっかり作られ、
登場人物も、いい意味でいやらしく、えぐるように描かれています。
(セシルの造形だけは、ちょっとゆるいかも。
彼女は、テレビ局で働き、
上司と寝ることで上昇してきた人だったのに、
マルタンと会って、
そのつまらなさに気づくのです。)

まさに現代的で、
野心的な映画でした。