ヴァンサン・カッセルが出演している韓国映画、
『国家が破産する日』
を見てみたんですが、まあ、一言で言って退屈だったので、
そういえばずっと見てなかった
『パラサイト』
でも見てみることにしました。
これはもう大ヒット作なので、
御覧になった方も多いでしょうし、
いろんな批評が(わたしはほとんど読んでいませんが)出たのでしょう。
というわけで、ネタバレありで少しだけ感想を。
ポイントは、ソン・ガンホが社長を殺すところにあるのでしょうが、
これは、地下に匿われていた男の代理、
という風に見えました。
つまりこの殺人は、ガンホの個人的な問題なのではなく、
階級的な行為なのでしょう。
半地下、あるいは地下に住む者たちの、
言い換えれば、金持ちに寄生することでした暮らせないものたちの、
宿主へのルサンティマン、
それが、ブルジョワ階級の象徴である社長殺しの動機に見えます。
そして問題は、この殺人を犯したガンホが、
またしても社長の家の地下に隠れたこと。
社長個人を殺しはしたものの、やはりガンホは、
寄生することでしか暮らせないわけです。
息子はいつかこの家を買い取るつもりですが、
(そしてそれは実現しそうにありませんが)
それもまた、現在の階級的構造の中で生きることの宣明でもあるわけです。
つまりこの映画は、
階級問題が生むルサンティマンを描きはしたわけですが、
それ以上ではない。
この映画が想定してる社会は、あくまで「そういうもの」であり、
つまり現状肯定的、ないし悲観的な諦念が、
映画全体を覆っていることになるのでしょう。
もしも監督が、
大衆がこの映画を否定することを願う、
とでもどこかで発言しているなら、話は別ですが。
技術的には、さまざまなジャンル映画の要素を利用していて、
観客を引きつける術にはたしかに長けているのでしょう。
でもやはり、
韓国の現状を示す小ネタがいくら多くても、
ことの本質に迫ろうという視線はないし、
上で書いた通りの意味で、
大きな限界をわたしは感じました。