もしもあの黄色いボールの中に入ることができたなら
きみはテニスになることができるだろうか?
もしも張りつめたガットのこすれ合う小さな叫びに身を焦がすなら
緑の大地のやわらかな芝のほとばしる葉液を鼻腔深く吸い尽くすなら
でもきみはテニスにはなれない
きみはあの、ねずみ花火のように回転する環にダイブすることも
そこここに閃いては消えてゆく悲鳴を握りしめることも
緑の見えない呼気を踏みにじることさえできないのだから
朝焼けを飛ぶ鳥が見下ろす湖
その広がる水紋の頂に整列するひかりの粒が
揺れたわみながら輝く回路を描くとき
もしもきみもまたそのひかりのひと粒から生まれたことを思い出すなら
けれどきっときみは見ることになるのだ
その右の掌に刻まれた、木と火と水の文様を