2020年8月27日木曜日

『ルート・アイリッシュ』

 どうも、『家族を想うとき』でケン・ローチを

(もともと好きでしたが)

再認識して以来、まだ見てない彼の作品が気になるし、

一度見たものももう一度見たいと感じています。

(数年後には、ケン・ローチ作品を見るゼミを開講してもいい?)

で、

今日見たのは

『ルート・アイリッシュ』

です。

これ、「戦争映画」という宣伝文句や、

いかにも戦争っぽいDVDのジャケットのせいで敬遠していたのですが、

実はハリウッド風の「戦争映画」ではゼンゼンありませんでした。

https://www.youtube.com/watch?v=vJwem3Kxmuw

2007年、イラク戦争。

ただ現場では、軍だけでなく、

強力な警備会社のような、

民間兵も「活躍」していました。

彼らは、高い料金で護衛をしたり、

現場での様々な処理に当たったりして、

大金を稼いでいたのです。

下っ端の社員の月給が100万越えです。

(もちろん、死の危険と隣り合わせですが。)


主人公ファーガスは、

かつての軍人であり、

その経験を生かして民間兵となりました。

で、失業中だった無二の友人をイラクに誘い、

その友人は、

ファーガスの帰国中、

「ルート・アイリッシュ」で攻撃され命を落とします。

この「ルート」は、

バクダッドの空港と安全地帯を結ぶ道で、

世界一危険な道、と呼ばれているのです。

が……

この友人の死には不可解な点があり、

ファーガスはどうしてもそれが気になります……


亡くなった友人には妻、レイチェルがいます。

彼女は、ファーガスを憎み、

同時に、彼が好きでもあります。

二人の間には、

きわめて錯綜した感情が流れ、

それも映画の縦糸の一つになっています。


ファーガスは、不完全な人間です。

行動力があり、人の痛みが分かると同時に、

短気で、粗暴で、独善的でさえあります。

ただ彼は、自己処罰的でもあるのです……


イラク戦争を、

「戦争映画」のようにではなく、

イラクの市民の痛みも含め、

見落とされがちな視点から描き、

しかもそれを、人間ドラマと結びつけました。

不条理、と言ってしまえばそれまでですが、

いわば人為的な不条理が、

フィルムに焼き付けられていました。