2024年8月29日木曜日

『座頭市と用心棒』

シリーズ第20作目、

『座頭市と用心棒』(1970)

を見てみました。
勝プロ製作で、
三船敏郎、若尾文子、岸田森、嵐寛寿郎ら、
豪華キャストに加え、
監督は東宝の岡本喜八です。
期待も高まります。

結論から言うと、「消化不良」という感じ。
いいところもあるし、
いいショットも、いいつなぎもあるんですが、
いかんせん物語が不鮮明。
登場人物の中に、「公儀隠密」が混じってるなんて、
最初は想像もしてないので、
今ひとつ物語が分からなくて、
最後になってもろもろ分かっても、
やっぱりちょっとスッキリしない感じが残ります。
豪華キャストだとありがち? な仕上がりでした。

三船はよかったですが、
さすがに『七人の侍』(←16年前)の時の勢いはなかったかな。
また、米倉 斉加年って、特に好きな俳優ではないんですが、
今回の「ダメ人間・若親分」は、とてもよかったです。
若尾文子は、声に特長があるんだなと、今回思いました。

2024年8月27日火曜日

『座頭市喧嘩太鼓』

シリーズ第19作目は、

『座頭市喧嘩太鼓』(1968)

です。
三隅研次監督なので、
見る前から期待値は高かったです。

そしてさすが三隅監督。
美しいショットも、
力強いショットも、
やさしいショットもあり、
時間の流れの緩急もあり、
よくできていると感じました。

当時27歳だったはずの三田佳子がヒロイン役。
姿勢が良くて、映えました。

前から思っていたのですが、
この座頭市シリーズは、
大昔、深夜のテレビドラマで見た、
『超人ハルク』
に似ているところがあると感じます。
流れ歩く二人は、
どうしようもなく揉め事に巻き込まれ、
自分なりの誠意を尽くした結果、
その街から出ていくことを余儀なくされるのです。
もちろん、さまざまな相違はありますが、
なんというか、悲しみが似ているのですね。

『座頭市果し状』

シリーズ第18作、

『座頭市果し状』(1968)

です。
監督は安田公義。
ヤクザ集団の一味に野川由美子がいます。

これは座頭市にはしばしば見られるんですが、
今回もまた、
ワルの仲間入りした男を、
なんらかの事情で座頭市が斬り、
ただ、その斬られた男の堅気の姉(ないし妹)が窮地に陥ったところを、
座頭市が救うという物語です。
座頭市が男を斬るのは不可抗力、
ないし正当防衛からなんですが、
それでもそれでも斬ったことにはちがいないと、
残された女性を助けるわけです。

この作品は、女性への暴行がやや多かったですが、
それ以外は落ち着いた演出で、
ふつうにおもしろく見られました。

野川演じる女性に実存的変化が見られ、
これは、シリーズを振り返っても、
珍しいケースだと言えそうです。

2024年8月26日月曜日

『座頭市牢破り』

シリーズ第16作目、

『座頭市牢破り』(1967)

です。

監督は山本薩夫。
ただそれよりも注目すべきは、
勝プロダクションの第一回製作作品だったことでしょう。
(大映の倒産は、1971年ですが、
そのだいぶ前から危ない状態でした。)

映画のデキは、
残念ながらイマイチでした。
力が入りすぎたのか、
詰め込みすぎで消化不良、という感じ。
物語が2つに割れていて、
むろんそれは分かってやっているわけでしょうが、
やはりうまく繋げられているとは言い難いと思いました。
脚本(3人で書いています)に無理があるというか。

また、池広一夫的映像が頻発。
手首や首そのものが飛びます。
こういうのは別にいらないです。
また、座頭市のキャラにも変化があって、
やや正義の味方的に、そして好戦的なっています。

おもしろいのは、
村人を教化する浪人の登場です。
説教くさくて、わたしは好きなキャラじゃありませんが、
名前を「水原秋徳」といい、幸徳秋水と3文字もかぶっています。
「尊王」を疑われ投獄された彼を座頭市が助けるのですが、
「剣」を否定する水原は、感謝しないのでしょう。

若き三國連太郎、細川俊之らが出演していました。

**********************

そして第17作は、すでに見た名作『座頭市血煙裏街道』。
これは大映の製作です。







2024年8月25日日曜日

『クロス・ミッション』

ネトフリの新作。
ファン・ジョンミン主演の

『クロス・ミッション』

を見てみました。

今は主夫に専念するカンムは、
刑事である妻にさえ、
かつて自分が特殊工作員だったことを隠しています。
けれども、
カンムの前にかつての仲間が現れ、助けを求めます……

ちょっと期待したんですが、
まあ、65点くらいでしょうか。
ストーリーも不自然だし、
アクションもショットも凡庸だし、
ファン・ジョンミンの良さもあまり出てないし。

イマイチでした。

『ザ・ユニオン』

ネトフリの新作。
ハル・ベリーが準主役の

『ザ・ユニオン』

田舎の元同級生。
男(マイク)は地元に残って、半径 1マイルの生活を満喫し、
昔の女性教員と寝たりして暮らしています。
一方女(ロクサーヌ)は、世界をみたいとそんな田舎を飛び出し、
今は政府系のエージェントに。
ただ、仲間を失い、どうしても新人が必要な局面で、
元同級生に白羽の矢を立てます。
で、マイクをいきなりロンドンに連れ出し……という物語。

107分というビミョーな長さになっているのは、
田舎の描写がやや長いから。
そういう田舎暮らしの、
ジモティーとして満ち足りて生きることを賞賛し、
彼らこそが世界を動かしているのだ、と、
想定された観客をくすぐる時間が必要だと考えたわけですね。
「ユニオン」は、映画内では組織名ですが、
もちろん「組合」でもあるわけです。
でも、そこはあまりおもしろくなかった。

作戦が開始してからは、
まあ、平均レベルのアクションものにはなっていると思いましたが、
ハル・ベリーではない、
役名もないワル側の女性に、とてもアクションが切れる人がいて、
その人はよかったです。

でもまあ、観客に媚びを売る映画っていうのは、
どうなんでしょうね?


納涼祭

地元のコミュニティが開催する納涼祭に、
住んでいるマンションとして「射的」の店を出すことになり、
今年は順番で理事の一人となっているわたしも、
一日がかりで手伝いました。

コロナで数年間途絶えていて、
今回は、久々の復活です。
(やってもいいけど手伝えませんから、
みたいな団体もいたんですが、
コミュニティの会長たちの強い意向で開催が決まりました。)

射的は人気があるので、
絶えず子供たちや家族連れがやってきて、
忙しかったです。
わたしは銃の使い方を説明する係なんですが、
小さな子供の場合、そもそもレバーを引き上げる力がないので、
それも手伝ってあげます。

小さい子たちはみんな可愛いですが、
特に女の子たちは、
浴衣を着ておしゃれして、嬉しそうです。
アフリカ系の元気な女の子(小3)のファティマとも、
仲良くなりました。
(4回も5回もやりにくるので!)

そういえば、
ファティマのお母さんなのか、
アフリカの民族衣装の女性も来ているし、
和太鼓チーム20人の中には、
白人の男女が交じっているし、
わたしたちの射的のとなりは、
中東系の夫婦がやっているケバブのキッチン・カーだし、
わがマンションの理事の一人は中国(しかも大連出身!)の方だし、
東京郊外の納涼祭も、
一昔前とは雰囲気が変わっていて、
いいなあ、と思いました。

汗だくで、すご~く疲れましたが、
やっぱり子供たちは可愛かったです!

『座頭市鉄火旅』

シリーズ第15作、

『座頭市鉄火旅』(1967)

を見てみました。
監督は、シリーズ3作目の安田公義です。

物語の骨格は、まあいつも通り、なんですが、
ひと味違うのは、
一人の鍛冶屋(東野栄二郎)が登場すること。
彼は、かつて刀鍛冶でしたが、
一流になった途端、
「お定まりの酒と博打」で破門となり、
その後は妻と赤子を連れて放浪。
そしてやっと、今いる土地の庄太郎親分のおかげで、
なんとか生活を持ち直し、
それ以降20年、鋤や鍬を作って生計を立てていました。
が、
心の奥底には、刀鍛治としてのアイデンティティが眠っており、
ある日、座頭市の技を見た時に、
そのアイデンティティがはっきりと目を覚ましたのでした。

この鍛冶屋が、座頭市を仕込み杖を触り、
もう寿命が来ている、と告げることが、
物語の大きな転換点になっています。

というわけで、
わたしは気に入りました。

2024年8月23日金曜日

『座頭市海を渡る』

シリーズ第14作、

『座頭市海を渡る』(1966)

を見てみました。
監督が池広一夫なので、
ちょっと心配だったんですが、
意外に(?)よかったです。

まず「海を渡る」というのは、
海外へ、ということではなく、
ここまでの舞台がみんな関東だったのに対し、
今作は四国が舞台になっているということです。
今まで、あまりに多くの人を斬り、多くの血を浴びてきた市がが、
その償いのために、お遍路に出かけるのです。

おもしろかったんですが、
やはり池広的な部分はそこここにあって、
例えば冒頭、市が切った相手の手首が禍々しく映し出されたり、
ワルモノが、今までのヤクザではなく馬賊(馬を乗り回す盗賊)で、
すごく西部劇チックであると同時に、
(もちろんここまでの作品にも、西部劇的な諸々はありましたが)
衣装の醸す雰囲気が妙に下品だったり、
唐突に「由美かおる」的な「サービス・シーン」があったり、
間延びさせないためなのでしょうが、
1つのバックストーリーを語るために、
3つの、時間帯の異なる場面をつないでみたり。

ただ、これはむしろ脚本の功績かもしれませんが、
ここまでの作品にはなかった要素が、
かなり強調されていました。
それは、村人たちのズルさです。
彼らは、自分たちを助けようとする座頭市を見殺しにし、
彼が悪者をやっつけてくれれば儲け物、
仮に殺されても実害はないし、
みたいな地点から、ことの成り行きを見守っています。
自分たちの村の存亡がかかっているのに!

今回は、池広のエンタメ精神が、
比較的うまく作用したと感じました。
でもまあやっぱり、
静けさは、ちゃんと描けていなくて、作り物っぽい。
この監督は、静けさが分かってないと思います。


2024年8月21日水曜日

Alain Delon

アラン・ドロンがなくなりましたね。
晩年は極右になって、
わたしも彼の活動を追いかけることはしませんでしたが、
ある時期スターだったことは、事実です。

今思い出してみて、
一番印象に残っているのは、
『太陽がいっぱい』のすぐ後に公開された、

『若者のすべて』(1960)

かな。
若きヴィスコンティの作品で、
映画そものものよかった。
確か大学生の頃、試写を劇場でみたんですが、
すぐ近くに、田中小実昌がいたのを覚えています。

そしてこれは有名なエピソードですが、
死刑宣告を受けたこともある「本物のワル」であるジョゼ・ジョヴァンニ
(彼は小説家や映画監督としても有名)
が、アラン・ドロンについて、
「あいつの目は、本物の悪党の目だ」
と言っていたことです。

大昔、パリの大きな通りの横断歩道を渡っていた時のこと、
先頭に、すごく大きくて真っ黒のシトロエンが止まっていました。
歩道を渡りながらふと車の内部を見ると、
助手席にアラン・ドロン!
あ! と思って2.3歩戻ると信号が変わり、
彼はニヤッと笑って風のように走り去りました。

また別の昔、
アラン・ドロンが来日した際、
大学院の女性先輩が通訳として付き添うことになりました。
サインもらってきて!
いいよ!
となったんですが、
ごめん、まったく言える雰囲気じゃなかった、
という結末。
彼女曰く、
ずっとピリピリしてたと。
何か仕事のことがあるのかもしれませんが。

高校生の頃は、
ベルモンドよりアラン・ドロンが好きで、
『暗黒街の二人』
『個人生活』
『ブーメランのように』
などは、劇場で来た記憶があります。
『個人生活』は、
むしろシドニー・ロームの方が印象に残りましたが。
そうそう、あれは中学の時、友達と
『さらば友よ』
を見に行ったのを思い出しました。
新宿ミラノ座でした。
ただ、今確認したら1968年となっているので、
リヴァイヴァル上映だったんでしょうか。
当時はそういうのも多かったです。

『冒険者たち』(←原作ジョゼ・ジョヴァンニ)は、
昔見てまあまあだと思ったんですが、
その20年後くらいに見直したら、
ぜんぜん退屈で、
自分の感想の変化に驚いたことがあります。

逆に『サムライ』は、
のちに見直した時も、割といいと思いました。
メルヴィルだしね。
クルマを盗むシーンで、
鍵たばから順に1つずつ試していくシーン、
印象的です。

ああ、なんだか、
そんなつもりなかったのに、
いろいろ書いてしまいました。
結局、たくさん見てるんですね。
やっぱり、スターはスターですね。
(極右は嫌ですけど。)

ICHI

ちょっと気分転換に、
主人公を女性に変えたリメイク作品、

ICHI(2008)

を見てみたんですが、
これ……
申し訳ないですが、ひどい。
半分見るのがやっとで、そこでやめました。
400円払ったんですけど!

まず、時間の管理が緩すぎる。
どの役者にも魅力がない。
セリフは説明的。
殺陣になってない。
衣装がバカっぽい……

直前に見た『座頭市の歌が聞こえる』に比べると、
その駄作さ加減が際立つようでした。

『座頭市の歌が聞こえる』

シリーズ第12作、『座頭市地獄旅』はすでにみたので、
今回は第13作、

『座頭市の歌が聞こえる』(1966、5月)

を見てみました。
監督の田中徳三は、シリーズ3作目です。

ヤクザなんかいなくて平和、と言われていた町に、
理不尽で横暴な親分たちが入りこみ、
人々を苦しめています。
この町に、
死に際の男性から預かったお金を届けにきた座頭市。
騒動に巻き込まれてゆきます。

よかったです。
第1作以来の登場となる天知茂も、
彼の元妻で、今は「女郎」となった小川真由美も、よかった。
画面の燻したような質感も、
シルエットを生かした演出も、
見ていて安心でした。
田中徳三、いいです。

2024年8月19日月曜日

『座頭市逆手斬り』

シリーズ第11作、

『座頭市逆手斬り』(1965、9月)

を見てみました。
監督は、第2作目、
『続・座頭市物語』の森一生です。
で、期待したんですが……

これは、デキが悪かったです。
まず、物語そのものがギクシャクしていて、
だいぶ見づらい。
また、座頭市の行動のモチヴェーションが低く、
映画に緊張感がありません。
いい役でキャスティングされた藤山寛美も、
変化をつけようとしたのは分かりますが逆効果。
(以前、中田ダイマル・ラケットが滑っていたように。)
さらに、演出も単調で、
意味なく引きのカットを見せ続けたり、
唐突に大音量の音楽が始まったりと、
何というか、ボロボロでした。

有名監督にも、駄作はあるという……

『座頭市二段斬り』

シリーズ10作目、

『座頭市二段斬り』(1965、4月)

を見てみました。
監督は井上昭。
坪内ミキ子が、シリーズ3度目の登場です。

座頭市が、自分のあんまの師匠を5年ぶりに尋ねると、
なんと師匠は殺され、
かつては小さかった娘が、
ヤクザの牢屋に閉じ込められ、
遊女にさせられそうになっていました。
そこに、
頼りない壺振りとその幼い娘(小林幸子)が絡みながら、
座頭市は、
郡代と組んだヤクザと戦います。

よかったです。
11歳という小林幸子の存在がよく効いていて、
おもしろく見られました。
ただ、
ストーリー説明上の必要からか、
ヤクザたちが「女郎」たちを手荒く扱う場面が何度かあり、
それがやや激しすぎた気もしますが。
ただそこには、
社会的な制度に対する怒りみたいなものも、
確かに感じられました。

やっぱり、子役が、
でしゃばりすぎない程度に上手く使われると、
風通しが良くなりますね。

2024年8月18日日曜日

『地面師』

ネトフリの日本のドラマ、

『地面師』

を見てみました。
7話完結なので、見やすい長さです。

結論から言うなら、70点、かな。
ギリギリB、という印象です。
一応最後まで引っ張られてみてしまうのですが、
映像的な魅力はあまりなくて、
人物は自分の内面を説明し、
あまりに都合のいい偶然が何度も起きます。
地面師グループ内には、キャラが被る人物がいて、
一方女性刑事の対応はとても不自然。
ただそれでも見てしまうのは、
サスペンスだけは作れているからなのでしょう。

一箇所だけ、ストーリーに関係なく「おお!」と思ったのは、
勤務先の大学が近い向ヶ丘遊園の駅前が一瞬登場し、
しかも、明治のスクール・バスまで写り込んでいた場面です。
(第3話の16分あたり。)
たま〜〜に、
夜飲み会があってクルマでクルマで行けないようなとき、
そのバスを使います。
そこが一番盛り上がりました!(それじゃダメじゃん!)

2024年8月16日金曜日

『座頭市関所破り』

第9作です。

『座頭市関所破り』(1964、12月)

監督は安田公義。
つまり、ここまででは一番デキが「?」だった、
第5作『喧嘩旅』の監督なので、
心配しながら見始めました。

でもそれは杞憂で、
ふつうにおもしろく見られました。
冒頭、中田ダイマル・ラケットが、
あれはなんなんでしょう、
縁日なので踊りなどを見せてお金を稼ぐらしい人たちを演じていて、
そこは「試み」だったんでしょうが、
完全に浮いていましたが、
それ以外は、
座頭市の父親? と思わせる老人も、
兄思いの妹も、
丁寧に描かれていて、よかったと思います。
特に老人の敗残感は、好感が持てました。

第5作がイマイチだったのは、
監督というより、脚本だったのかなと思いましたが、
それを担当した犬塚稔は、
第1作なども書いていて……

第5作だけ謎ですが、
まあ、同じ監督でも、
でき、不出来はありますからね。




Martina Navratilova maman à 67 ans !

67歳でママに!?
往年の名選手にして、
レスビアンであることを公言している、
マルチナ・ナブラチロワ。


67かあ!

2024年8月15日木曜日

8月15日

わたしが予備校に通っていた頃、
飛び抜けて人気のある英語の先生がいました。
たまたまわたしのクラスは、
彼の授業がもともと組み込まれてい単ですが、
その授業だけは、
大量のモグリ
(と言っても同じ予備校の生徒なので、特に問題ないんですが)
が発生したものです。

彼はの授業は確かにたくみで、
イディオムの整理の仕方もうまかったと記憶しています。
また雑談も、エンタメとしてのおもしろさはありました。
その時代なので、今ならアウトの下ネタも結構ありましたが。

彼の話の中で、
1つ、とてもよく覚えているものがあります。
田舎育ちの彼が、
戦争中のある日、田んぼの間の小道を歩いていた時のこと、
遠くから爆音が聞こえ、
それがみるみる近づいてきたのです。
彼は走って逃げましたが、
まるでドラマみたいに、道の真ん中で転んでしまいました。
爆音は近づき、もうだめだ、と思ったそうです。
そして振り返ると、
B29が、自分目掛けて降下してきます。
彼は身動きできず、
じっとB29を見つめました。
「目が合ったんだよ、パイロットと」
そしてB29は、高度を上げると、凄まじい轟音と共に、
彼の上を飛び去って行ったのです……

田舎の少年1人を撃ち殺しても、
戦争の帰趨に影響はないでしょう。
ただそんなことより、パイロットは人間だった。
そのパイロットのおかげで、
わたしたちはその先生の授業を受けられたわけです。

それにしても、
もっと、もっと早く降伏していれば、
何十万という命が救われたのに、
と思わずにいられません。
もちろん、そもそも開戦しなければよかったのですが、
せめて、インパール作戦の前に。

『座頭市血笑旅』

今日は第8作、

『座頭市血笑旅』

を見てみました。
監督は、第1作『座頭市物語』、
そして『地獄旅』や『血煙り街道』の、三隅研次です。
考えてみればこれら3作は、みな傑作です。

今回の作品は、
座頭市と間違われて殺された母親が残した赤ん坊を、
父親のところに届ける、という物語です。
もちろん座頭市には、彼の命を狙うものたちが襲い掛かります。
ただそれと並行して、
座頭市の、今までほとんど見せたことのなかった、
赤ん坊への愛情が描かれてゆきます。
赤ん坊との交流の中で、
「こんなに幸せだったことはなかった」
とさえ、彼は言うのです。
ちょっとした「セイブ・ザ・キャット」どころではないのです。

映画は、よくできていました。
わたしには、やはり、池広監督より、
三隅研次の方が遥かにいいと感じられます。
座頭市もまだやめませんが、
三隅研次の作品も見てゆきたいと思います。
今まで、この辺の日本映画はあまり見ていないので、
勉強になります。
今年の夏休みのテーマはこれかな!?
(まあ、フラ語本の仕事も毎日やってますけど!)

イスラエル国民は

授業では、
「国家」と「国民」を分けて考えるようにと言いますが、
では、今回の新生児たちへの爆撃した国家について、
イスラエル国民たちはどう考えているのか?
反戦運動などはないのか?
という気になります。
もちろん、まったくないということもないのでしょうが、
今日のフランスのニュースによれば、
去年の10/17以来、
イスラエル・メディアでは、
パレスチナの人々の映像はほぼまったく流されていないらしいのです。
ガザの街々の破壊、
死体、傷ついた人々、
そして今回のような虐殺も。

権威主義国家は、メディアを牛耳ることで、
自分たちに都合のいい方向に国民を押し出します。
ここでもまた、その常道が繰り返されているわけです。

外国からの圧力が、どうしても必要なのに、
アメリカ政府も、ドイツも政府も……

『眠狂四郎 女妖剣』

KADOKAWAチャンネル(2週間のお試し中)にあった、
池広一夫の作品、

『眠狂四郎 女妖剣』(1964、10月)

を見てみました。
主演は市川雷蔵。
久保菜穂子にとっては、昨日見た『座頭市あばれ凧』(わずか3ヶ月前)の、
次回作ということになります。
今回はキリシタンの「聖女」なので、
役柄はずいぶん違いますが。

結論から言うなら、
B級、という感じでした。
「無頼の徒」というアイデンティティを生きる狂四郎には、
これといった屈折が感じられません。
池広監督得意の血飛沫は何度かありますが、
別にどうということはありません。
そして今作は、いわゆる「エロ」場面が満載です。
まあ64年ですから、映像的にはなんてことはないですが。

というわけで、やはり「エンタメ」を撮る監督なんだなと感じました。

「生後4日の双子が空爆で死亡」

こんなこと、起きていいはずがない。



『座頭市あばれ凧』

今日は第7作、

『座頭市あばれ凧』(1964年7月)

を見てみました。
前作から4ヶ月です。

監督は、前作同様、池広一夫です。
(ただ撮影監督は代わっています。)

始まってすぐ気づくのは、
出演者たちの名前のフォントが、
以前のような、荒々しい筆書きに戻っていることです。
(前作のみ、活字体でした。)
どういう経緯かはまったくわかりませんが、
戻そう、という意見があったのでしょう。
そして全体的なトーンも、
前作より落ち着いたものとなり、よくなっていました。
(障子に血飛沫がパッと広がる、みたいな、
派手な演出はやっぱりありますが。)
物語の運びのテンポの良さは前作通り。

終わらせ方は、
1〜6作とは違って、
街を去ってゆく座頭市、みたいなものではありませんでした。
これは、90分以内に終わらせようってこともあるのかもですが、
こういう終わりもあってもいいかもとは感じました。

座頭市シリーズは、
同じキャラの物語なのに、
監督が違うとずいぶん違った映画になります。
監督、そして撮影監督の仕事がどんなものなのか、
正確に言葉にするのは難しいですが、
感覚的にはかなりわかる気がします。

2024年8月13日火曜日

『座頭市千両首』

座頭市シリーズ第6作、

『座頭市千両首』(1964・3月)

を見てみました。
前作の公開からたった3ヶ月半、
東京オリンピックの年の作品です。
監督は、池広一夫です。

全体としては、十分おもしろかったです。
物語も緩みがないし、
見せ場はあるし、
いい感じの映像もそこここにあるし。

ただ、
音楽がややうるさい時があったこと、
前衛舞台風のオープニングがやや場違いなこと、
斬り合いの最中、編集で入れたクロース・アップが安っぽくて、
(テレビ・ドラマ的安っぽさで)
かえって興醒めになること、
などが弱点かと感じました。
まあ、派手にしようとしてるのは分かりますが、
座頭市的静けさを、もっと大事にしていたら、
これはかなりいい作品になっていただろうと思います。
社会主義的とも言えるような価値観もあり、
そこは共感できたところです。

2024年8月12日月曜日

『座頭市喧嘩旅』

座頭市シリーズ第5作、

『座頭市喧嘩旅』(1963)

を見てみました。
監督は安田公義です。

この作品は、
ちょっと笑っちゃうような場面や、
もちろん派手でスピード感のある場面などもあるんですが、
少し重い気がしました。
その最大の理由は、
出てくる2人の女性たちが、
一方はルックスのいい、けれども浅知恵の小悪党で、
もう一方は、自分では何もできず、他人に頼ることしかできないお嬢さん、
という描かれ方をしているからです。
63年で、しかもヤクザ映画ですから、
家父長主義に貫かれているのはまあ、そういうものだとして、
ただそれにしても、
女性たちの描かれ方に、やや悪意さえ感じました。
ミソジニーと言っても良さそうです。
そう、愛が足りない、という感じでした。
第1〜5作の中では、一番デキが悪い気がしました。

ワカモノと

今日もまたカフェに行って、
カバンを席に置いて、
飲み物を買って席に戻って座ろうとすると、
ふと、
隣のテーブルに置かれている新書が目に入りました。
なんと、
まさに今わたしが読んでいるのと、同じ本を読んでる!
その席の人は今いないのですが、
テーブルの上の持ち物から、
学生の気配。
どうかな?

戻ってきたのは、
やはり学生風の男子(と言われるカテゴリーに見える人)でした。
そして彼が帰る時、
同じ本を読んでるんだよ、
という感じで話が始まり、
15分くらいでしょうか、
おしゃべりしました。
大学3年で、専攻は哲学。
大学院を視野に入れているとか。

話を聞いていると、
わたしが大学3年だった時より、
はるかにしっかりしています。
頼もしいです!

まだまだ先は長いですが、
いい研究者になってくれることを祈っています!
陰ながら応援しています!

『座頭市 兇状旅』

というわけで、「座頭市」第4作、

『座頭市 兇状旅』(1963)

見てみました。
監督は、『新・座頭市物語』の田中徳三です。

今回の座頭市は、
アクションシーンで、
かなり大勢の敵に囲まれます。
その大群を切り裂くように彼は進み、
目指す浪人の前まで進み出て……と展開します。
なかなかの見せ場です。

そして実は、
シリーズの第1作で登場し、
座頭市に向かって嫁にしてくれと頼んだ女性が、
第2作に続き、3度登場します。
(なのでもしもシリーズを見る場合は、
とりあえず1〜4までは、順番通りに見るといいと思います。)
この「おたね」という女性(万里昌代)は、なかなかいいです。
江戸時代にあって、どうしようもなく状況に振り回されるので、
「いい」というのは語弊があるかもしれませんが、
魅力的な人物です。

で、この映画もおもしろかったんですが、
1つ不満点は、
座頭市と対決することになる浪人のキャラに、
陰影が乏しかったこと。
単純で、可愛げのない悪役です。
彼にもっと屈折があれば、さらに良くなったと思います。


2024年8月9日金曜日

「決めセリフ」集 春に!

「ふらんす」で連載している「決めセリフ」シリーズですが、
春には、あれを5倍くらいに膨らませて、
本にする企画があります。
で、夏休みに入り、
連載以外の部分を書き進め始めました。
まあ、こちらの量の方がはるかに多いので、
夏休みにどこまで進められるか、
という感じですが、
楽しくやっています。

「決めセリフ」集でありながら、
どうしても(?)読み物風になっちゃうんですが、
ご期待いただければ嬉しいです!

なぜか「座頭市」

なぜか、昼ごはんの後などに、
つい「座頭市」を見てしまいます。
もう一回整理すると、

『座頭市物語』        (1962)第1作 三隅 研次監督
『続・座頭市物語』     (1962)第2作    森 一生監督
『新・座頭市物語』     (1963)第3作  田中 徳三監督

『座頭市 地獄旅』     (1965)第12作 三隅 研次監督
『座頭市 血煙り街道』(1967)第17作 三隅 研次監督

ここまで見ました。
三隅 研次監督作品の撮影は、
すべて牧浦地志です。

この中では、1と17が特に良かったですが、
3もなかなかよかった。12も良かった、って、
ほとんど良かったことになります!

アマプラとDVDで見てるんですが、
もう少し続けましょう。

ちなみに、以前全作品をみた「兵隊やくざ」シリーズが始まったのは、
1965年です。


勝新、大忙しですね。

2024年8月7日水曜日

ワルツ副大統領候補

ハリス候補が、
誰を副大統領候補に選ぶのか、
とても注目されていましたが、
ワルツ氏が選ばれました。
ミネソタ州知事だそうですが、
わたしは、候補者のリストに名前が上がるまで、知らない人でした。
で、この演説です;


さすがアメリカの知事。
とてもいい演説で、なんというか、嬉しくなりました!




2024年8月6日火曜日

8月6日

26分過ぎあたり、衝撃的です。

『ひろしま』(1953)