2024年8月23日金曜日

『座頭市海を渡る』

シリーズ第14作、

『座頭市海を渡る』(1966)

を見てみました。
監督が池広一夫なので、
ちょっと心配だったんですが、
意外に(?)よかったです。

まず「海を渡る」というのは、
海外へ、ということではなく、
ここまでの舞台がみんな関東だったのに対し、
今作は四国が舞台になっているということです。
今まで、あまりに多くの人を斬り、多くの血を浴びてきた市がが、
その償いのために、お遍路に出かけるのです。

おもしろかったんですが、
やはり池広的な部分はそこここにあって、
例えば冒頭、市が切った相手の手首が禍々しく映し出されたり、
ワルモノが、今までのヤクザではなく馬賊(馬を乗り回す盗賊)で、
すごく西部劇チックであると同時に、
(もちろんここまでの作品にも、西部劇的な諸々はありましたが)
衣装の醸す雰囲気が妙に下品だったり、
唐突に「由美かおる」的な「サービス・シーン」があったり、
間延びさせないためなのでしょうが、
1つのバックストーリーを語るために、
3つの、時間帯の異なる場面をつないでみたり。

ただ、これはむしろ脚本の功績かもしれませんが、
ここまでの作品にはなかった要素が、
かなり強調されていました。
それは、村人たちのズルさです。
彼らは、自分たちを助けようとする座頭市を見殺しにし、
彼が悪者をやっつけてくれれば儲け物、
仮に殺されても実害はないし、
みたいな地点から、ことの成り行きを見守っています。
自分たちの村の存亡がかかっているのに!

今回は、池広のエンタメ精神が、
比較的うまく作用したと感じました。
でもまあやっぱり、
静けさは、ちゃんと描けていなくて、作り物っぽい。
この監督は、静けさが分かってないと思います。