今日は相変わらずの暑さの中、上野の「コロー展」に行ってきました。
習作から始まって、深い緑色を堪能した後、ついに「真珠の女」と初対面。ああ、やっと会えたね…… という感じ。というのも、
まだ小学生の頃、自宅にあったポケット・サイズの本の表紙が、彼女だったのです。子供にとってさえ、彼女はなんとなく気になる女性でした。フランスで会ってもよさそうなものなのに、なぜかなかなかおめもじ叶わず、やっと今日…… というわけです。
まあなんというか、やっぱり素敵な女性でした。コローが晩年まで手放さなかったのも、よく分かる気がします。
コローは生涯独身だったわけですが、もし結婚して、もし子供を持っていたら、どんな絵を描いていたでしょう? これはまちがいなく、生命感に溢れた、玉のような子供を描いていたことでしょう。とても見てみたかった!
今回の展覧では、コローの作品がインスパイアしたと思われる絵も並列されていて、それも面白かったです。シスレーの描く、まさにコローと印象派にまたがる感じの森とか、コローから出発して、点描を指差す感じのルノワールとか。ごくごく初期の、まだ具象的なモンドリアンとか。「現実じゃなく、心、感情を描く」というコローに共感していたというカンディンスキーこそありませんでしたが、コローがひとつの「揺りかご」になる様子が、よく分かりました。
吉本隆明がどこかで、「<派>なんてものはないんだ。<個人>がいるだけだ」と書いていましたが、まさにその通り。それぞれの画家が、それぞれの資質にあったナニカを、コローから受け取っているようでした。
そして実は、そのあとダブル・ヘッダーで、あのオランダの画家にも会ってきました。(つづく)