台風でこんな天気ですが、みなさんいかがおすごしでしょうか?
今日は夕方から、新宿のジュンク堂に行ってきました。「トークイベント・細川周平~管啓次郎」を聞くためです。
メインは、細川さんが最近出版された『遠きにありてつくるもの 日系ブラジル人の思い・ことば・芸能』という本。この分厚い本は、細川さんの移民研究の集大成。膨大なフィールドワークと思考の結晶です。
「郷愁というのは、生き物みたい。たとえば、わたしは郷愁なんて関係ないわ、と言っていた女性が、たとえば身内の病気などがきっかけとなって、突如郷愁にかられる、なんてことが起きるんですね。なんだか、あの映画のエイリアンみたい、郷愁って。自分じゃどうしようもないことってあるけど、郷愁もそのひとつ」
「ブラジルという異国にいて、日本語しか話せないっていうのは、ひとつの負い目になりうるのね。でもそれが、短歌とか川柳みたいな<型>を使う日本語と親しむうち、その負い目が誇りに転化するってことがある」
なるほどねえ。そういうことってあるんでしょうね。ある気がします。
ところでこの「遠きにありて……」って、何日か前にここで話題にした室生犀星でしたね。この詩は、故郷に帰らない決意表明なんだ、と書きました。だから故郷は、もう帰らない、思うだけの場所=存在しない場所、なのだと。
ブラジル移民にとって、それは「つくる」ものだった。犀星が東京でただ「思って」いたのとはちがって、かれらはそこに「つくって」しまった。この違い、面白いですねえ。もちろんそこには、言葉の問題が深く関わってくるのでしょう。
いやまあ、それにしてもこういう話を聞くと、自分が何も知らないのに今さらながら驚きます。細川さん、管さん、ありがとうございました!