ええ、ほんとに~!? ということが、目の前で起きました。
これはまったく無名な詩人で、植村諦(うえむら・たい)という人がいます。生まれは1903 です。
彼の代表的詩集に『異邦人』があります。これは 1932 に出てますから、フランスのアレより前ですね。植村はいわゆるプロレタリア派、というかアナーキストに近い人で、彼にとって昭和初期を生きることは、まさに「異邦人」として生きることだったようです。で……
復刻版でもあるかなあ、と思って明治の図書館を検索したところ、おや、本物が収蔵されています。ラッキー! さっそく配送をお願いして、先週届きました。で、読もうとしたのですが、
まず驚いたのは、本の扉に、著者自筆の献辞が書いてあったことです。
祖国なきよろこびと悲しみと 諦
豊島与志雄様
おお、あの岩波の『レ・ミゼラブル』の訳者、豊島与志雄宛だ! でもなぜこんな本が明治の図書館に?
でまあ、とりあえず通読。うん、これはなかなかいい。政治的過ぎず、純真な怒りも。なるほどねえ。
で今度は、ちょっと「植村諦」で検索してみると……
おや、豊島与志雄関連の項目が1番上に来てる。どれどれ。
見るとそれは、今読んだばかりの『異邦人』の書評でした。ちょうどいい! で読んでいくと……
植村君はその詩集の扉に、「祖国なきよろこびと悲しみと」と私に書いてよこした……
私に? それってもしかして…… この本のこと? 今目の前にある??
いやあ、驚きました。本当に本物です!(画像。さっき撮影。)
こんな貴重本、貸し出しちゃっていいんでしょうか? 保存庫に入れることをお勧めします、図書館様!