2015年4月30日木曜日

Cliente

もう30年も前ですが、
大学のある先輩が、
「ナタリー・バイが一番好き」
と言っていたことがありました。
まあ、それはともかく、
今日見たのは、彼女が主演した

Cliente (「女性客」)2008

です。
準主役を演じるのは、
わたしにとっては、
『イブラヒム』の終わり近く、
大人になったモモを演じた、
エリック・カラヴァカです。

映画としては、ダメ作品でしょう。

ヒロインは、
51歳独身で、
仕事で大きく成功してる女性です。
彼女は、月に1、2回、
若い男を買っています。
そしてその買われた男の一人が、
彼女と親密になるのですが、
妻帯者である彼は、
そうはいっても妻を愛していて……
というわけで、
書いていても、ちょっと鬱陶しいような……

でも、これが「ダメ作品」だというのは、
このストーリーというよりも、
演出そのものにあります。

以前、小田島隆氏が、ある番組で言っていました、
「渡る世間……」というドラマは、
登場人物の心情を、
すべて(本人の、あるいは他人の)セリフで解説してくれるので、
想像力や解釈は必要ないのだ、と。
まあこれは、
たとえばNHKの連続テレビ小説なんかでも、
ときどき過剰な説明が入りますし、
色んなテレビ・ドラマで見出せることなんでしょう。
でも、映画ではあまり見ません。

ところがこの作品ときたら、
何人もの登場人物が、
ここぞというところで、
自分の心情をナレーションで入れてくるのです。
ある発言をしたあとで、
でもほんとはそう思っていなかった、
みたいな本人によるナレーションが。
これは、ダメでしょう。

ただ、がんばっていい点を探せば……
これは先日の Lulu femme nue に通じるような、
50代の女性の「迷い」を描いていると言えば言えるのでしょう。
でもそれが、買春に向かうところ、
そしてヒロインは、そんな自分を「自由な女」だと信じているところが、
もうまったく lamentable なのでした。