2015年4月10日金曜日

l'appât

l'appât (「餌」「誘惑(物)」)という映画を見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=WaQO3LRr91Q

この映画は、(見た後に知ったのですが)
1984年に実際に起こった事件を題材にしたものでした。
その事件とは、

http://fr.wikipedia.org/wiki/L%27app%C3%A2t_(fait_divers)

映画内の名前を使うなら……
洋服屋の売り子であるナタリー(18歳。実際は16歳だった)は、
お金持ちの服飾業者のドラ息子、エリックと同棲中。
その部屋には、やや理解力の劣るブリュノも居候している。
エリックは、まだ十代なのに、
一度会社を潰した経験があり、
アメリカにさえ行けば、
必ず成功できると信じている。
残る二人も、その「夢」に、積極的に乗っている。
そしてその資金を作るために、3人はある企みを思いつく。
ナタリーに、金持ちの男を誘惑させ、
彼女が男の部屋に入り込んだ後、
エリックたちを手引きし、
強盗を働く、というものだ。
けれど、彼らは強盗しただけではなく、
殺人までいってしまう……

ナタリーを演じたマリー・ジランは、
奔放で、性的に自由で、
ほとんどまったく道徳観念のない少女を、
とてもうまく演じていると感じました。
また監督のベルトラン・タヴェルニエも、
丁寧に事件を跡付け、
だから作品は、
決してスキャンダラスなキワモノにはなっていません。

この映画、『イブラヒム』と同様、
街行く生地業者の姿がはっきり捕えられていました。
で、実際の事件は、サンティエ地区で起きたわけなので、
固有名詞が示されるわけではありませんが、
やはりサンティエを意識したのは間違いないでしょう。
ということは、舞台はユダヤ人街なのです。

エリックが、ある男(なんとリシャール・ベリ)を殺そうとした時です、
男はエリックに言いました、
「お前はユダヤ人だろう?
わかるよ、おれもそうだから……。
ユダヤ人はな、たとえ詐欺や盗みはしても、
殺人は決してしない。
まさか、兄弟を殺すわけないだろうな?」

また、逮捕時にナタリーがつけていたネックレスには、
「ダビデの星」がついているのですが、
それは、べり演じる男のところから盗んだものでした。

(でも、映画としていい作品だとしても、
今は釈放されている3人にとっては、
歓迎できないものでしょうね。)

*追記:
日本版のVHSがありました。
(DVDは未発売のようです。)

『ひとりぼっちの狩人たち』