2016年9月18日日曜日

『幸福の設計』


<古典>12弾は、

『幸福の設計』(1947)

やはりジャック・ベッケル監督です。
原題は、主人公夫婦の名前から、
Antoine et Antoinette。

この映画の話に入る前に、

ベッケル監督の作品を少し整理するなら;

1943  赤い手のグッピー
終戦
1947  幸福の設計
1949  7月のランデヴー
1951  エドワールとカロリーヌ
1952  肉体の冠
1953  エストラバード街
1954  現金に手を出すな
1958  モンパルナスの灯

(これ以外にも 5 作品ありますが、
それはちょっと措いておいて。)
つまり『幸福の設計』は、
『7月のランデヴー』の直前の映画ということになります。

若夫婦がいます。
まじめ人のいい夫は製本工場(→文化)で、
活発な妻はデパート(大型スーパー?)で働いています。
メトロの La Fourche 駅近くの小さなアパルトでの「貧乏暮らし」ですが、
若くて愛し合っている二人は、楽しそうです。
ストーリーとしては、
この二人が宝くじに当たるのですが、
換金に行く途中、なんとくじをなくしてしまう、というものです。

まず大事なのは、主人公たちが労働者であること。
というのも、戦後2年、そういう映画は少なくなっているからです。
(この時代に人気があったのは、ジェラール・フィリップだったわけです。
騎士だの貴族だのが、彼の当たり役でした。)

妻アントワネットは魅力的で、
いろんな男たちが狙っています。
隣人のパラサイト青年、
そして、彼らのアパルトの、
通りを挟んで向かいにある食料品店の、
金だけはある、痩せたオヤジ。
アントワーヌは、こアントワネットアントワネットを守ります。
ただ、
二人に対する攻撃は、
こうしたものだけではありません。
最も強烈なのは、「消費財」です。
彼らは、洗面所のあるアパルトも、
スーツも、コートも、バイクも、欲しいのです。
戦後たった2年ですが、ここにはすでに
「消費」
が出現しているわけです。
強欲オヤジは、こうした現実の権化でもあるわけです。

この映画は、
しかしヒットしませんでした。
もう、労働者がブルジョワを倒す映画は、
時代が要求しなくなっていたのです。

そしてベッケルは、こうした結果を踏まえて、
『7月のランデブー』に向かうわけです。