2016年9月5日月曜日

『獣人』

<古典>第5弾は、

『獣人』(1938)

です。
ルノワール&ジャン・ギャバン。
原作はゾラですが、
映画の時間的舞台は「現在」。
空間的には、サン・ラザール駅とル・アーヴル駅が中心です。

https://www.youtube.com/watch?v=HBLe_J0P7vI

まず冒頭、
機関車が疾走するシークエンスが5分ほど続くのですが、
これがなかなか圧巻。
しかも、終わってみれば、
登場人物のほとんどは鉄道関係者であり、
この機関車こそ、
映画を貫く存在であることに気づきます。

まずランチエ(ジャン・ギャバン)。彼は機関車の運転士です。
そして彼とコンビを組む火夫ペクー。
ル・アーヴル駅の助役、ルボー。
その妻で、ランチエと関係を持つことになるセヴリーヌ。
さらに、鉄道会社の社長で、
セヴリーヌの養父であるグランモラン。
(実際は養父ではなく愛人。
しかも、セヴリーヌの母は、
グランモラン家の家政婦で、
セヴリーヌの父はグランモラン氏の可能性もある。)

ルボーは、妻がグランモランの愛人だったことを知り、
妻と共謀して彼を殺します。
ランチエは、犯行のあった列車に乗り合わせており、
二人が犯人であることに気づきますが、
セヴリーヌに魅かれ、その事実を隠します。
そして二人は良い仲になりますが……
最終的には、ランチエはセヴリーヌを殺し、
自らも機関車から飛び降り自殺して、映画は終わります。
(翌年の『陽は昇る』もまた、ジャン・ギャバンの自殺で終わります。)

ランチエは、多くの機器類を操っていて、
つまり、専門技能があり、
ワーキング・クラスの中ではかなり上位です。
ルボーはプチ・ブルで、
「資本の番犬」と言えば言えるでしょう。
グランモランは完全にブルジョワ。
となると、
ブルジョワは、
自分の「番犬」を務めるプチ・ブルに、
セヴリーヌを「譲渡」したことになります。
ただそのセヴリーヌを、労働者が殺す。
(セヴリーヌは、「フランス」なのでしょうか。)
そして労働者の死において、
映画は終わるわけです。

古典、侮れません!