レダ・カテブ、
マチュー・カソヴィッツ、
という、珍しい組み合わせのキャスティングの映画、
Le Chant du Loup (2019)
を見てみました。
アントナン・ボードリ監督にとっては、
初の長編作品です。
あくまでエンターテインメント映画としてですが、
かなりよくできていると思いました。
軍事用語が多くて、フランス語は難しかったです。
(日本では、フランス映画祭で、1日だけ公開されたようです。)
潜水艦もの、というと、
『レッド・オクトーバーを追え』とか、
『Uボート』とかを思い出しますが、
今ちょっと調べてみると、
実際には、かなり作られていました。
主人公は、「黄金の耳」を持ったショーセット。
(靴下を忘れてことがあって、このあだ名。)
彼は、音を聞けば、その実体が分かるという特殊能力があり、
しかも、それを使って分析官の仕事をする訓練を受けた若者です。
たとえば、
キーボードにパスワードを打ち込む音を聞いて、
あとからそれを再現できちゃったり。
そんな彼が潜水艦に乗り込み、
敵の動きに耳を澄ますわけです。
2時間超の映画は、およそ3部に分かれていて、
最初は、シリア沖でフランス兵を迎える予定が、
なんとショーセットの判断ミスにより、
大変な危機に陥る物語です。
中盤は陸の上。
いろいろ調べるうち、
あれは判断ミスではなく、
そもそもの軍のリストにエラーがあったことが判明。
その実体は、旧ソ連の潜水艦でした。
そして終章は、
原子力潜水艦と、それを見送る潜水艦が出航し、
その後なんと、
ベーリング海峡からフランスに向けて、
核ミサイルが発射されたという情報が入り、
一気に緊張が高まり……
潜水艦という閉鎖空間は、
それだけである緊張をもたらしますが、
その緊張が高まるような演出がなされていて、
飽きるところがありません。
エンタメとして成功している所以です。
ただ、
この手の映画の判断はいつもビミョーです。
どうしても、フランス国家に奉仕するものたちの美学、
ないし、
軍人として生きる潔さ、
みたいなものがにじみ出てしまい、
それに完全に乗ることは不可能だからです。
ただこの映画は、
たとえば『ゼロ・ダーク・サーティー』ほどの、
露骨なプロパガンダ感はなく、
「アクション映画」に徹している感じはあります。
ちなみに、
褒めている批評が多い中、
ヌーヴェル・オプスは、
ストーリーが馬鹿げてるばかりじゃなく、
キャスティングも全然ダメ、
と切り捨てていました。