2020年1月14日火曜日

Les Invisibles

今日見たのは、

Les Invisibles (2018)

つまり「見えない者(物)たち」というタイトルの映画です。
この映画も、去年の「フランス映画祭」において、
『社会の片隅で』というタイトルで、
4日間だけ公開されたようです。

https://www.youtube.com/watch?v=NaYUuvYXN_I

ベルギーとの国境に近いアンザン。
ここは、『ジェルミナール』の元になった事件のあった土地で、
明らかにその文脈が感じられます。
この町にある、
女性ホームレスたちのための、
日中の収容施設が舞台です。
この施設で身を粉にして働いているのは、
職員のオドレーと、
施設長のマニュ、
そしてヴォランティアのエレーヌです。
そしてここには、日中を過ごすため、
あるいは食事やシャワーのために、
女性たちが集っています。
ヨーロッパ系白人も、
アラブ系も、
アフリカ系もいます。
ただ、この施設に来ている女性たちは、
社会復帰率がとても低い。
それは職員たちが甘やかすからだ、という理由で、
この施設は閉鎖されることになります。
そしてここから、物語が動き始めます。

マニュたちは、
閉鎖どころか、
上層部に隠れ、
この施設で寝泊まりすることを許します。
ただそれはあくまで、
女性たちが社会復帰するのを助けるため。
つまり、
社会と向き合うための尊厳を取り戻させるためです。
もちろん、求人も限られてはいます。
それでもより重要なのは、
女性たち自身の尊厳なのでしょう。
(マニュには、アフリカ系の養女がいます。
彼女も、幼いホームレスでした。)

映画の中で、こうした女性たちを演じているのは、
実際にホームレスだった人たちです。
だから、と言っていいのかどうかわかりませんが、
部分部分は、とてもドキュメンタリー風です。
こうした「見えない」存在の女性たちにスポットを当てること、
それがこの作品のキモであるのは、誰が見ても明らかでしょう。

ただ一方で、
オドレーの葛藤、
つまり、こんなに安い給料でこんなに尽くして、
カレシも家もお金もなくて、
わたしには何にもないじゃない!
という嘆きも描かれます。
またエレーヌも、
実は夫が離婚したがっていて、
でも自分は別れたくないという状況の中で、
ヴォランティアに打ち込んでいるわけです。
(オドレーを演じるのは、
Tout ce qui brilleの体操コーチ、
あるいは『パリ未成年保護特別部隊』の、
赤ちゃんを揺すって補導されるお母さん、
を演じた彼女です。
そしてエレーヌは、
『カミーユ、恋はふたたび』に主演していた、
ノエミ・ウヴォヴスキです。

ケン・ローチの『ダニエル・ブレイク』と並べると、
英仏の「貧困」が置かれた状況が見えてきます。
日本版DVDが出れば、授業で使いたいです。
(ぜひ出してください!)