2021年5月1日土曜日

『望郷』のパリ

数日前、院生たちと『望郷』を見たと書きました。
で、
1つ印象に残ったことを書いておこうと思ったのですが、
それは、パリの地名についてです。

ジャン・ギャバン扮するペペが、
金持ちの男性の愛人らしき美女、ギャビーと初めて会い、
意気投合する場面。
そこで二人は、ともにパリを(「望郷」らしく)懐かしみ、
互いに、次々にパリの地名を挙げていくのですが、
ギャビーが挙げたのは、
シャンゼリゼ、
オペラ、
キュプシーヌ大通り、
モンマルトル通り、
フォンテーヌ通り。
一方ペペが挙げたのは、
サン・マルタン、
北駅、
バルベス、
ラ・シャペル、
ロシュシュアール大通り、
なのです。
この違い、かなりはっきりしてます。
言ってみれば、お金持ちの、遊興的なパリと、
移民と労働者のパリです。
そして、この列挙の締めくくりには、
二人が同時に同じ地名を口にします、それは、
ブランシュ広場、
でした。
このムーラン・ルージュの真正面の広場は、
たしかに、
二人の世界が交わる場所になっています。

それにしても、これらの場所の持つ記号性は、
1930年代も現代も、
ほとんど変わっていないんですね。
ちょっと新鮮でした。